再生。
水たまりの上に足を踏み入れた時、水の表面は足の形に砕け、波の模様を形成する。
側から見れば、「泡」が破裂したようにも見えるだろう。
足が水面に触れた瞬間。
その「一瞬」に元の形は失われ、勢いのままに姿を変えていく。
怪物の左腕、——斬撃が入った表面には、水が砕けたような繊細な模様の変化があった。
波の波紋に生じる水面の変化。
それが、刀が触れる鋒に“零れて”。
動作は途切れていなかった。
怪物は止まらない。
血飛沫が舞った。
その不測の状況にも、「攻撃」への選択を途切らせない。
体が再生したのは動作の渦中だった。
前に押し出そうとする力。
上半身から搾り出される回転力を重心の内側に連動させ、腕を伸ばす。
血の一滴一滴は舞い上がったままだった。
空中に留まる液体の雫が、無数の粒子となって浮かんでいた。
時間が静止したようにも見えた。
“時間差”があったからだ。
体育館で見た、謎の現象。
あの時確かに、ヤンキー野郎の腕が“変形”していた。
変形し、骨が露わになっていた。
それにも関わらず“再生”していた。
…いや、わからない
あの時のあの現象を、なんていう風に表現していいかわからない。
砕けた水面が元の姿に戻る。
それに近い「現象」が、視界に通り過ぎていく。
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