ブーニベルゼが人間界にやってきたのは、どうやらその派遣先である東の塔内部の調査中に、ある「出来事」が起こったことがきっかけらしい。
詳しくは彼女も聞かされていないらしいが、人間界に行くためのルートは限られているらしく、魔界と人間界との境界線が世界樹の根の下にあるという「話」だけは、子供の頃に教えてもらっていた。
ただ、どういった経緯で人間界に来たのかだけは、いまだに知らないみたいだった。
人間界に来た「目的」自体は、ハッキリしているそうだが。
「ある“魔族”を追っている…?」
「…魔族というか、今、人間界で大変なことが起こってるらしくて」
「大変なこと?」
「うーんと、彼女が言うにはね、「ウルドの泉」っていう泉の中に流れている生命の記憶の中に、”入っちゃいけないもの“が入ったみたいで…」
「入っちゃいけないもの…」
「人間の魂の中にそれは干渉するみたいで、魔界ではその物質を「黒潮」って呼んでるらしい」
「…ふーん」
「それが入ってしまったせいで、世界が今少しずつ”腐食“してるっぽい」
「腐食!?」
「彼女はその腐食を止めるために、こっちに来てる。黒潮が流れてる”元凶“を断ち切るために」
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