「グアアッ」
粗い呼吸。
隆起した地面。
踏み出すと同時に右足が持ち上がる。
それは、ほんの僅かな変遷に過ぎなかった。
地面に触れていたつま先が、怪物の呼吸に合わせて上下する。
体全体を動かすほどの躍動。
壁を破壊するために投じられた“腕の振り”が、ブーニベルゼとの間にある「境界」を揺らす。
途端に金切音が響いた。
鈍い音ではなく、金属が破れるような音。
2人の間にあったのは、「時間」だった。
ただ、それは2人の攻防、——その「影」を動かすほどの“大きさ”ではなかった。
限りなく圧縮され、それでいて少しの変化も入り込めないほどの「密」。
そこに残るのは、直線上に動く怪物の姿だった。
左腕を再生させながら、回転速度を速める支点。
体の半身は常にブーニベルゼの方を向いている。
踏み込んだ足が地面へと食い込む。
足の形に沈む最中、重力が“逆立った”。
怪物の拳が、壁の内側へと流れようとしていた。
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