ジッちゃんに怒られたことが昔あった。
まだ小学生だった頃の話だ。
夕方に楽しみだったアニメを見てて、急に画面が切り替わったんだ。
「緊急地震速報」だった。
何気なく言っちゃったんだ。
「邪魔だな」って。
そしたら怒られた。
家にある室内練習場に連れだされ、「竹刀を持て」って、強い口調で。
「ユウト。お前はなんのために剣道をやっている?」
「なんのため?…うーん。強くなるため」
「お前にとって「強さ」とはなんだ?」
「試合に勝つこと」
「…そうか。では、“試合に勝てればそれでいい”と思うか?」
「…思う」
「いいか。よく聞け。「剣」を握るというのは、敵を斬るためにあるわけではない。自分を律するため、自分の心に打ち勝つために握るんだ。小さいお前にはまだわからんかもしれんが」
「自分を、…律するため?」
「剣が届く間合いは、一歩の差によって決まる。その「一歩」は、試合の“中”にあるわけではないのだ」
「…どういうこと?」
「私たちの隣には常に「死」が付きまとう。それは皆平等で、誰一人例外は存在しない。ナイフの切れ味は、1000年前も1000年先も変わりはしない。普段の1秒をどう生きるか。それに尽きているんだ」
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