プリンセスは殺し屋

殺すぞ?
平木明日香
平木明日香

第33話

公開日時: 2024年1月23日(火) 13:31
更新日時: 2024年1月29日(月) 22:30
文字数:491



 ジッちゃんに怒られたことが昔あった。


 まだ小学生だった頃の話だ。


 夕方に楽しみだったアニメを見てて、急に画面が切り替わったんだ。


 「緊急地震速報」だった。


 何気なく言っちゃったんだ。


 「邪魔だな」って。


 そしたら怒られた。


 家にある室内練習場に連れだされ、「竹刀を持て」って、強い口調で。



 「ユウト。お前はなんのために剣道をやっている?」


 「なんのため?…うーん。強くなるため」


 「お前にとって「強さ」とはなんだ?」


 「試合に勝つこと」


 「…そうか。では、“試合に勝てればそれでいい”と思うか?」


 「…思う」


 「いいか。よく聞け。「剣」を握るというのは、敵を斬るためにあるわけではない。自分を律するため、自分の心に打ち勝つために握るんだ。小さいお前にはまだわからんかもしれんが」


 「自分を、…律するため?」


 「剣が届く間合いは、一歩の差によって決まる。その「一歩」は、試合の“中”にあるわけではないのだ」


 「…どういうこと?」


 「私たちの隣には常に「死」が付きまとう。それは皆平等で、誰一人例外は存在しない。ナイフの切れ味は、1000年前も1000年先も変わりはしない。普段の1秒をどう生きるか。それに尽きているんだ」



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