ザシュッ
最初に放たれた斬撃から、空中に舞い上がった血が落下する。
その糸間を縫うように「時間」が押し曲がる。
動作と動作の内側には、絶えず時間の接点が犇めいている。
空気の流れは歪んでいない。
刀の鋒は、緩やかな軌道の外側に止まったままだ。
怪物が振り絞った一撃は、ブーニベルゼの眼前に迫っていた。
再生による左腕の変化は、腕が伸び切った後も続いていた。
ボコボコと浮き上がる細胞が、皮膚の下からせり立つ。
壁の表面には亀裂が疾る。
拳の形に沿って伝播していく波紋。
ビキキッと、雷のように迸る模様。
——事実、壁は壊されたかに見えた。
両者の境界に揺れる振動は、物質を変形させるだけの“量”を伴っていた。
時間の変化はその中心にあった。
怪物の攻撃が及んだ、【先端】に。
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