ヤンキー野郎はしばらくジタバタしていたが、じきにおとなしくなった。
腕を引き離そうとしていたが、それも徐々に弱々しくなっていく。
さくらは、——あの「悪魔」は、掴んだ手を離さなかった。
ガシッと首を掴んだまま、じっと相手を見下ろしていた。
離したのは相手の抵抗が完全に消失してからだった。
数十秒も経たない頃に、ヤンキー野郎はピクリとも動かなくなった。
仰向けのその姿を見た誰かが、悲鳴を上げた。
「キャアアアアア」
悲鳴と同時に、一気にざわつく館内。
観客席にいる生徒はもちろん、孝太や夏海も唖然としていた。
目の前で起こったことが、あまりにも現実離れしていたせいで。
「ふむ…。少々目立ち過ぎたか」
俺は俺で整理ができない。
”さくらじゃない“ことはわかっていた。
それを差し引いても、彼女の身体能力はずば抜けていた。
そもそも、だ。
戦いに割って入り、「俺を助ける」と言ってきた。
目の前にいる相手は、「人間じゃない」って…
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