……ドチャッ
一瞬、目を疑った。
攻撃は中断されていない。
それは“確か”だった。
怪物のモーションは途切れていない。
振り切った腕が壁の表面を掴み、上半身が回転している。
体重移動が行われる際の挙動。
問題は、その“挙動”の最中に、置き去りにされる「物」があったこと。
あるべきはずのものがなかった。
そう言った方がいいんだろうか…?
滑らかな挙動は歯車が動く動作のように抜かりなく進んでいた。
“詰まり”はなかった。
認識が及ぶ範囲では、動作の流れの中にある力の向きは、前方へと移動しているように見えた。
時間の経過によって変動する空間。
耳元に掠めていくノイズ。
その上澄みを掬うように、両者の距離が交錯する。
刀の断面が滑空する。
怪物の半身が斬り刻まれる。
「黒い刀身」が、針ほどの隙間から浮かび上がってくる。
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