「グオオオオッ」
ブーニベルゼを取り囲む、半径1メートルほどのサークル。
彼女はその場から動いていない。
刀が届く範囲の「円」の中で、ただじっと、緩やかな挙動を取っている。
斬撃と同時に血飛沫が舞った。
怪物がよろめいたのは、血飛沫が舞うよりも「前」だった。
風が通りすぎる僅かな隙間。
スカートが揺れる、ほんの小さな挙動。
目で追えるスピードの中には動いていなかった。
ただ、刀が疾る軌道だけは、空気が裂ける切れ目の中にあった。
ドッ
——一閃。
しかし、怪物は怯まない。
血の雫が空中に飛び出している。
その一滴一滴の重力圏は、フィールドの立体平面上を泳ぐ。
刀が走った軌道。
その鋒から溢れてきたのは、皮膚が千切れる「音」だった。
斬撃によって怪物の左腕は損傷していた。
肩から下が“裂けて“いた。
切れるというよりも爆ぜていた。
泡が弾ける。
ほんの微かな、——それでいて確かな。
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