「仕方がないだろう。こうでもしなければ、此奴はまたさくらを襲おうとするぞ」
「さくら様は同意しておられたようですが…」
「ほう。お前はさくらの味方をするのか。ではなんだ?私の「体」を此奴の好きにさせていいとでも?」
「ブーニベルゼ様の体である以前に、この体の所有権は主にさくら様にあります」
「だとしてもだ。それに、こんな小僧に何ができる?なぜ私が此奴らのままごとに付き合わなければならんのだ」
「それはそうですが…」
謎の生き物は、パタパタ羽を動かしながら彼女と話していた。
声は高く、女の子っぽい声色だった。
…いや、そんなことはどうでもいい。
一体なんで「喋って」るのか。
それが謎すぎるんだが…
「…ふん。まあいい。おい、小僧。「私」が何に見える?」
「何…って…」
「私は貴様が思っているような単純な生き物ではない。いや、本来「生き物」というのはどこにも存在していないかもしれんな。この”地上“では」
「…はい??」
「私がさくらではないことは、なんとなくわかるか?」
「…あ、えっと…」
「つまりそういうことだ。さくらと私は1つの体を分け合っている。契約を交わしたんだ。もう10年以上も前に」
…契…約…?
1つの体を分け合っている…って??
「“無断で体に触れるな”とはそういうことだ。わかるな?」
「さくらは…?さくらはどこに?!」
「案ずるなと言ったろう。話が終われば元に戻る」
「あんたは誰だよ…!」
「だからさっきから説明しているだろう。私は人間ではない」
人間じゃないって言われたって…
「悪魔」とか、そんなふざけた話が…
「さくらが望めば、お前を殺すことだって容易い。ありとあらゆる「死」の体験をさせてやることも。…まあ、せいぜいそうならないことを祈るんだな」
「ダメですよ。あまり怖がらせては」
「ふふ。しかしこんな小僧の何が良いのか私にはわからん。自分よりも弱い生物を好きになるなどと…」
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