プリンセスは殺し屋

殺すぞ?
平木明日香
平木明日香

第46話

公開日時: 2024年1月31日(水) 13:02
文字数:415


 再び対峙する。


 竹刀を構える。



 …記憶が追いつかない。



 アイツの放った一撃は恐らく「胴」だ。


 横からの軌道。


 それは間違いなかった。


 ただ、問題はそれが「死角」の中で起きたことだ。


 全国レベルになるとほんの僅かな選択のミスが命取りになる。


 それをカバーできるのは敵との“位置取り”。


 「小手」への攻撃に転じた時、重心はまだ後ろに残していた。


 10か1かじゃなく、感覚としては4対6。


 竹刀を操作できる領域をできるだけ広く持つ。


 その意識が常に途切れることなく、直線的に動ける範囲を残しておく。


 できるだけ「無駄」を削ぐことが、試合中の優位性を推し進めるためのファクターになる。



 だからこそ、だ。



 アイツがどうやって懐に潜り込んできたのかがわからなかった。


 まるで異なる時間軸の中にいるかのようだった。


 一歩の「差」ではなく、より広い単位の中で生じた誤差。


 それをなんて表現すればいいかわからなかった。


 意識が“途切れた”。


 それに近い何かが、不意に通り過ぎていったような



 


 

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