再び対峙する。
竹刀を構える。
…記憶が追いつかない。
アイツの放った一撃は恐らく「胴」だ。
横からの軌道。
それは間違いなかった。
ただ、問題はそれが「死角」の中で起きたことだ。
全国レベルになるとほんの僅かな選択のミスが命取りになる。
それをカバーできるのは敵との“位置取り”。
「小手」への攻撃に転じた時、重心はまだ後ろに残していた。
10か1かじゃなく、感覚としては4対6。
竹刀を操作できる領域をできるだけ広く持つ。
その意識が常に途切れることなく、直線的に動ける範囲を残しておく。
できるだけ「無駄」を削ぐことが、試合中の優位性を推し進めるためのファクターになる。
だからこそ、だ。
アイツがどうやって懐に潜り込んできたのかがわからなかった。
まるで異なる時間軸の中にいるかのようだった。
一歩の「差」ではなく、より広い単位の中で生じた誤差。
それをなんて表現すればいいかわからなかった。
意識が“途切れた”。
それに近い何かが、不意に通り過ぎていったような
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