2人が言う「彼」というのは、さっきのヤンキー野郎のことだ。
なぜかアイツも屋上にいた。
意識を失ったまま、床に倒れていた。
「仮にコイツが無法者だとして、どうして「私」を?」
「さあ、それはわかりません。「非政府軍」のメンバーの可能性も、あるいは…」
「いや、それはない。ヤツらは地上では隠密に行動する。こんな日中堂々と私の前に立つなど、よほどの事情がない限りはない。それに…」
会話の内容は理解できなかった。
普通の会話じゃないことは何となくわかった。
政府がどうのって感じの言葉が聞こえた気がするけど、気のせい…?
「ヤツらは私の実力を理解しているはずだ。こんな小物を意味もなく寄越すとは思えん」
「彼らのアジトには、念の為諜報員を送らせました」
「ほう?東京の支部にか?」
「ええ。品川区の局舎ビルには、すでに職員も何人かおりますので。しかし、これといった情報はとくに得られておりませんね」
「そうか。となると、少し奇妙だな…」
「それよりも、どうしてこの人間を?」
「それはお前の言葉か?それとも、中の「主人」の言葉か?」
「両方ですわ」
「連れてこなければ、事情を説明できんだろう」
「事情…?あのフィールドの中にいる人間は、とっくに記憶を失わせております」
「情報操作は大罪だぞ?わかってるのか?」
「何を今さら。あのまま放置しておけば、学校中が大騒ぎになっていたことでしょう」
「順序というものがあるだろう。情報操作の管轄は「公安」になる。書類の申請、事前報告、その他諸々の手続きは?」
「私たち「ハンター」には、『特例措置対象』への実行権があるのはご存知ですか?」
「知っているが、この魔族を誘い出したのはお前だろう?その場合の適応範囲は適切なのか?」
「お姉様があの場面で介入しなければ、フィールドを展開することもありませんでした」
「いつも都合が良いな、お前は。少しは弁えたほうがいいぞ?ここはあくまで「地上」だ。地上には地上のルールというものがある。そういう面倒なものに巻き込まれたくないから、私はどこにも所属していないのだ。少しは見習え?」
「…今回に限れば、問題を起こしているのはお姉様の方ですが?」
「どの口が言う?…まあいい。小僧は無事に連れてこられた。コイツを始末した後、さくらと面会する時間を設ける。くれぐれも、邪魔をするな?」
「…まさか、この「男」はすでに知っているのですか?」
「色々あってな」
「はあ!?聞いてませんけど??」
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