◇◇◇
旅館でのあの出来事以来、俺とさくらは少し疎遠になっていた。
仲が悪くなったとかじゃなくて、なんとなく気まずい雰囲気っていうか。
「おっす!ユウト」
「…痛った。なんだよ朝から」
後ろ頭をガシッと掴まれ、何事かと思いながら振り向く。
朝から元気に挨拶してくるのはクラスメイトの菅原孝太。
部活の仲間で、中学からの連れでもある。
「で、どうなったんだよ??」
「はあ!?」
「夏休み。行ったんだろ?温泉旅行にさ」
どこでその情報を仕入れたのかは知らないが、お前に話す義理はない。
夏海に言ったのが不味かったな。
絶対情報源はアイツだろ…
秘密にしとけよって言ったのに。
「なんでお前が知ってんだよ」
「なっつんに聞いたんだよ。大丈夫。今んところ俺となっつんしか知らんから」
「広まったら殴るからな?」
「大丈夫大丈夫。なっつんだって俺だから喋ってくれたようなもんだし」
そもそも俺が許可してないのに広まってること自体が問題なんだが?
…まあいいや
どうもこうもないっつーの。
旅行自体は楽しかったぜ?
さくらも喜んでくれてたし。
「…なんもなかったん?」
「どういう意味…?」
「男と女が一つの部屋で夜を共にしたんだろ?やることは1つじゃねーか!」
この猿が…
だからお前は童貞なん…
って、俺もか。
あわよくば卒業できたような気もするが、まさか、あんなことになるとはね…
読み終わったら、ポイントを付けましょう!