弧を描いた軌道。
滑らかな半円。
——ブシュッ
その「音」は、意識の背後からやって来た。
刀を振る軌道が、微かに空気を濁したような感触がした。
怪物の上半身はすでに“そこ”になかった。
上半身、——彼女と怪物を結ぶ、「空間」が。
セーラー服に返り血が飛ぶ。
白いシャツには、赤く細やかな血の雫がぶつかる。
ブーニベルゼは“最小”の動きの中にいた。
怪物の拳が、彼女の前髪に触れる瀬戸際だった。
——ボッ
炎が点火する音。
チリッと灼けつくような匂い。
壁の破片が散り散りになりながら、さざめく粒子が視界の中心に止まる。
圧縮される間合いの内側にあった、物体間の“距離”。
ブーニベルゼは、その【中間】に爪先を向けていた。
赤い鮮血が、斬撃の後を縫うように「線」を引いた。
確かな接点は、両者の中間にあった。
明暗が分かれたのはほんの小さな“境界“だ。
「境界」と呼ぶには、あまりにも密着した接平面。
その、——奔流。
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