“なぜお前にいちいち話さねばならんのだ?”
彼女はそう言っていた。
2人がどういう関係なのかはわからなかった。
陽菜で間違いない。
あくまで、「見た目」の話ではあるが。
だけど“本人”じゃない。
それはさくらが、あの悪魔に変わった時と同じような感覚だった。
陽菜のことはよく知らないが、陽菜じゃない。
何となく、そう感じた。
「一体どこまで知っているんです?」
「私が悪魔であるということは知っている。少なくとも、「さくら」ではないことは」
「なぜ?」
「だからなぜそれをお前に説明しなきゃならん」
「地上の人間には知られてはいけない。それがルールでしょう?公安の人間でもないのに」
「心配するな。世の中は常に変化している。いずれ日常的になるさ。私たちが地上にいることは」
「その時はその時だと思いますが、今は状況が違います」
「お前はどうなんだ?ルールがどうかと言うが、お前がやっていることは犯罪だぞ?」
「心配いりません。私の主人は三葉財閥の令嬢ですから。何かあっても揉み消せますわ」
「そういう問題じゃないだろう。仮にコイツが死んでいたら、さくらがお前を許さなかったぞ?」
「死んでしまえば、新しい肉体を与えるまで。いい加減、お姉様も理解したほうがよろしくてよ?」
「何をだ?」
「その体を捨て、家に帰るんですよ。こんな汚れた場所に何年もいると、魂まで穢れてしまいますわ」
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