1週間が経とうとしていた頃だった。
母さんが、祐輔のいる病室に訪れたのは。
「祐輔君。娘に会いたがっていたわよね?会いにくる?」
どこか神妙な面持ちで、寂しそうな顔をしていた。
母さんの後をついて歩き、7階にある病室に入る。
集中治療室からは出れたみたいだった。
どうやら、命に別状はなかったみたいだ。
ってことは、私の体に戻れるってこと!?
そうウキウキしながら、カーテンを開けたんだ。
いてもたってもいられなくて、自然と足が動いた。
そしたら…
「…………え?」
最初、その姿を見た時に絶句した。
声が出なかった。
顔には包帯が巻かれたままで、喉にはまだ、…チューブが。
目は瞑ってた。
腫れぼったい瞼が、ほんのりと紫色になったまま。
「三夏、祐輔君が会いにきてくれたわよ」
母さんの声は震えてた。
目の下にはクマができていた。
ずっと、寝ていなかったみたいだった。
「…あの、これは…」
「先生がね、まだ意識は回復しないって…」
“意識が回復しない”
その言葉を聞いただけなら、私も納得ができる。
でも、それが言葉の中だけで理解できるような状況を、目の前の「私」は諭してはくれなかった。
自発呼吸ができない体。
死んだように冷たい手。
なんとなく、わかったんだ。
普通じゃないってことが。
今、自分の「体」が、どれだけひどい状態なのかを。
「…おい」
祐輔は、愕然とする私の横で、静かに声をかけてくる。
いつもはヘラヘラしてるくせに、病室に入った途端、顔色が変わった。
私と同じように、最初はウキウキしてたんだ。
やっと俺の体に戻れる!って、歯を見せて。
「…大丈夫か?」
彼は、何も言えずにいる私を、心配そうに見つめてくる。
彼にもわかってた。
多分。
普通じゃないんだって。
私の「体」が、すぐに戻れるような状況じゃないって。
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