何度か集中治療室に入ろうとした。
でもダメだった。
普通の病棟に移されたとは言え、まだ安静にしてなさいって言われてる。
安静にしてるも何も、個人的にはそんなことしてる場合じゃない。
私の体があの部屋の中にあるんだ。
看護婦さんが私のことを宥めて、ひとまず病室にいてくださいと言ってくる。
腕に刺された点滴。
頭に巻かれた包帯。
頭を強く打ったらしく、軽い脳挫傷を起こしてるみたいだった。
だからまずは経過観察をして、おとなしくしてろということだ。
…だけど
なんでアイツの体に入ってるんだ?
ずっとそのことばかり考えてた。
電車に乗ってたって言うけど、祐輔の顔を見たのは中学の卒業式以来だ。
それ以来、連絡も取っていなかった。
理由はまあ色々あるんだけど、そんなことより、アイツが同じ電車に乗ってたってことが、一番の驚きだった。
確か、市内の高校に通ってたんだっけ…?
友達づてに聞いたことがある。
私にとってはどうでもいいことだから、スルーしてた。
私立だか公立だか、そこら辺はよくわかんない。
アイツはバカだから、公立なんかには通わないか…
とりあえず、同じ電車に乗ってたって、今まで全然見かけたことないけどな…
たまたま…?
いやいや、もう2年も高校生活を送ってんのに、この前に限って…?
祐輔のカバンが、病室にある。
グローブとボール。
あと、筆記用具。
学生証とか、財布とか、色々入ってた。
ファッションに興味がないアイツらしく、質素というか簡素というか、いたってシンプルな私物ばかりだ。
センスゼロの謎のキーホルダーは、相変わらずだった。
昔から、変なアクセントをつけたがるんだよね。
理由は聞いたことないけど。
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