博多駅に着いたのは昼の12時を回った頃だった。
そこから電車に乗り換えて、『春日駅』っていうところまで行った。
博多駅と違って小さな駅で、長閑な街並みが、階段を上った先の通路から見えた。
線路沿いのフェンスに、ずらっと敷き並べられた自転車。
トタン屋根の古びた柱が、閑散とする駅のホームに並んでいた。
えーっと、先輩は…っと。
「そっちじゃなくね?」
「でも駐車場の近くにいるって」
「南って言ったらあっちだろ?」
入り口を出たところにあるロータリー。
スマホを見ながら、待ち合わせ場所を探してた。
『駅の目の前の駐車場』
でも、どこの駐車場のことだろう??
駅を出て向かい側の道を歩き、キョロキョロ見渡してた。
目の前…
目の前って言うけどなぁ
「おーい!」
コンビニの近くまで歩いてると、後ろから声が聞こえてきた。
先輩だ。
見るからに優等生かつスタイル抜群の“スーパーウーマン”が、そこにはいた。
(あれが、葵先輩…?)
(そうそう)
最初、話しかけていいのかどうか迷った。
本当に実在したっていう安堵感と、想像以上の美女が出現したことによる驚きとが混ざって。
開いた口が塞がらなかった。
…なんで、こんな人と付き合えてるんだ…?
何かの間違いじゃ…
「祐輔君!」
葵先輩は大きく手を振り、満面の笑みで駆け寄ってきた。
目がくりくりだ。
服装はすごくラフで、露出度が高い…
ノースリーブにデニムのショートパンツ。
半袖の日焼け跡が、うっすらと二の腕に残っていた。
「すいません、待ちましたか…?」
「全然!そんなことより大丈夫?事故、ニュースで見たけど…」
怪我はないかってジロジロ見てきた。
大丈夫です。
この通りピンピン…
ピトッ…………………
………………………………ヒャッ!!
おでこに手を当てられ、体が硬直する。
ふわっと甘い香りがした。
オレンジの匂いだ。
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