「うまくやれば他の人も説得できるだろ」
「どうかな…。紗良は天然なところがあるから」
「このまま誰とも連絡しないつもりか?」
「うーん…」
連絡してもいいけど、するならするでちゃんと計画を練らなきゃダメだ。
下手なことして不審がられてもめんどくさい。
私の体はあんなだし、いつ戻れるのかもわかったもんじゃない。
ある程度目処がついてからでも遅くないでしょ?
いつだって連絡はできるんだから。
「そうか…?」
「そうだよ。余計な心配しすぎ」
「へいへい」
夏休みが終わって、学校が始まったら、しばらく「橘祐輔」として過ごすことを決めた。
そのうちに何か改善されるかもしれない。
自分の体に戻れるヒントが、転がり落ちてくるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に秘めながら、軽トラに乗って郊外を走った。
田んぼが広がる田舎道の上でガタガタ揺らされ、祐輔に家に着いた。
2年ぶりだった。
小ぢんまりした三角屋根の、その家を見たのは。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!