バスに乗って20分。
山道を上った先にあるバス停で降りて、あとは徒歩で。
わんわん鳴く蝉と、道なりの電信柱。
長い坂道だった。
自動販売機すら無い道と、苔の生えたガードレール。
車はほとんど通ってなかった。
チョロチョロと流れる小川が、道路の脇の下に流れていた。
若草の影が、透き通った水面の上でひょっこり顔を出していた。
田舎だな…
そう思いながら、ヒーヒー歩いた。
先輩は、少しも疲れた様子も見せずに、私の前を歩いてた。
さすが、テニス部のエース…
「今日さ、夜祭りがあるんだけど」
「祭り?」
「そう。ちっちゃい祭りだけどね」
今年はまだ、花火も見れてない。
先週開催してた盆踊り大会。
毎年夜、海で花火が上がるんだ。
私たちの町のビックイベントだった。
「よかったら一緒に行かない?少ないけど、屋台も出るみたい」
「…あ、はい、ぜひ!」
ジージー
ジジジジ
坂道を上がった先に、赤い瓦屋根の家が見えた。
先輩のおばあちゃん家だ。
夏休みの間、毎年訪れてるみたいだった。
広い庭と、軒下の漆喰壁。
畑道具が、縁側の石段のそばに立てかけられてる。
網戸の向こうで、扇風機が首を振ってた。
チリンチリンという風鈴の音が、屋根の下で揺られながら。
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