「今年の夏、惜しかったね」
「え…?」
「あと1回勝てば、甲子園だったのにね」
…甲子園?
そうか、祐輔のヤツ、硬式野球やってるんだった。
硬式野球と言えば甲子園だ。
昔はよくテレビで見てた。
「あと1回って…?」
「決勝戦。私も見に行ったんだよ?覚えてない?」
決勝…って、地区大会でってこと?
なかなかやるじゃん。
そういえば、中学の時スカウトが来てたんだっけ。
強豪校から。
あの一ノ瀬高校からも、…確か来てたよね?
全国でも超名門の。
でも、祐輔が今通ってる高校って千葉高だよね?
そんな野球強かったっけ?
公立でしょ?
あんま強いって聞いたことないような…
「その試合のこと、あんま覚えてなくて…」
「そうなの?めっっちゃかっこよかったよ!」
だってさ?祐輔。
チラッと彼の方を見たけど、なんだか浮かない表情をしてた。
先輩がすっごいキラキラした目で褒めてくれてるのに、照れた様子もなくて。
…なんかあった?
さっきは言い過ぎたかな。
いやいや、悪いのはコイツであって、私は悪くない。
むしろ、まだ怒り足りないくらいだ。
あんたのせいで赤っ恥かくとこだった。
わかってんの?それ
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