「一体何が起こってんだ…?」
「電車事故が起こったんだって」
「…みたいだな」
平然としているように見えて、案外動揺している。
そりゃそうか。
全然覚えてないけど、とんでもない事故が起こったんだ。
テレビはどのチャンネルをつけても事故のことばかりで、新聞は今日も一面。
200人以上も亡くなったって、逆によく生きてたなって思う…
脱線事故だよ…?
何かとぶつかったって言ってたけど、何とぶつかったのかはまだはっきりしてないみたい。
「ケガは?」
「だから集中治療室に…」
「大丈夫なんか?」
「大丈夫じゃない…」
「ちょっと見てくる」
「え!?」
そう言って彼は部屋を出ようとしたが、すぐに引き返してきた。
「やっぱりダメだ」
「ダメって?」
「自分の体からあんまり離れられないんだ。行けて10mくらい」
そうなんだ…
「せっかくお前の醜態を見に行こうと思ったのに」
「…あんた、デリカシーってもんがないの?」
こう見えてわりと傷ついてるんだよ?
まさか、自分の体があんなことになってるなんて思いもしなかった。
戻ろうにも戻れないんだ。
あんなに重症だと。
「様子見に行ってみんか?」
「やだ」
「なんで??」
「まだ頭が痛いんだって」
「自分の体に戻りたくないん?」
「戻りたいけど、今戻ったら多分地獄を見る」
「そんなにひどい状態なん??」
「うん」
全身打撲に肺挫傷、内臓の損傷、骨折、etc
眼底骨折なんて普通はしないでしょ?
今まで感じたこともない痛みが、全身に襲ってくると思う。
…多分
「今までどこおったん?」
「だから、今日目が覚めたんだって」
「じゃなくて、ずっとここにいたってこと?」
「そうだが?」
「声かけてよ」
「かけたよ」
「ほんとに?」
「全然気がついてくれねーから諦めてたんだ。ずっと隣にいたのに」
…ずっと隣に
そうだ。
コイツ、私の行動をずっと見てたってことなんだ。
…でも待てよ
ってことは…
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