目が覚めて以来、夜は寝付けなかった。
頭痛はしばらく続いて、時々、記憶が覚束なくなる。
水曜日の朝だそうだった。
電車事故が起こったのは。
「7月22日の朝、千葉県千葉市内で起こった電車事故ですが…」
テレビをつけると、一日中電車事故のことが流れている。
線路から大きくはみ出した電車。
粉々に飛び散った線路。
地面には、大きく抉れたようなクレーターができていた。
どうやら、電車が脱線してしまったのは、空から落ちてきた謎の飛来物が、機体とぶつかったことが原因らしい。
その“飛来物”がなにかは、まだはっきりしていないらしかった。
ただ監視カメラの映像と、地面に空いたクレーターの跡から、隕石じゃないか?という憶測が世間の中で広まっていた。
おじさんも、その1人だ。
「しかし、運が良かったな。大勢の人が亡くなったそうだ…。乗っている車両が違っていれば、お前も…」
私が祐輔の体に入っていることは、まだ、誰も信じてくれていない。
自分でも整理できていなかった。
誰かの体の中に入ることなんて、常識的にあり得ないっていうのと、…まあ、諸々。
どう説明すればいいのかわからないし、理解しようにも「どうやって?」って感じ。
あんまり周りには言わないようにしてた。
言ったって、誰も聞く耳を持ってくれないもん。
「記憶はまだ戻らないのか…?」
「…えーっと、うん」
私のことを祐輔だと思って、おじさんは接してくる。
それにどう対応すればいいのかわからなかった。
アイツのこと、よく知らないし、ラインだってたくさん来てるけど、パスワードがわかんなくて開けない。
「そうか」
おじさんには悪いけど、なんとかして私の体に戻らないと。
…でも、どうやって…?
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