高校生。そんな華々しい身の上に反して、少女『執骸 桜夜(とむくろ さくや)』は己の眼前にある世界を嫌悪した。この世のものではないものが視えてしまうその特異体質を疎んでいたのだ。
特別性など望まない。ただ人らしく、普通に在れればそれで良いのだと。
────日常は暗転する。
起き上がる屍者、闊歩する影。そしてそれだけに留まらず、自身の住む街に隠された余りにも理不尽で凄惨な『裏の歴史』。
横行する異能と狂気に、やがて逸らし続けた視線を前へ。少女は再び、有り得るはずもない現実と相対する。
「それでも、わたしは……わたしの日常を護りたいって、思うんだ」
それは一人の少女と一人の青年、そして数多の者が織り成す────消し去られるべき英雄譚。