イルン幻想譚

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16.禁忌の真実【4】

公開日時: 2024年11月19日(火) 23:00
文字数:1,375

「では、タクトはあのドラゴンの正体は何だと思うんだ?」

『ふん…アレは、妖魔化ガルドナイズした人間フォルクであろう』

「え、合成妖魔キメラじゃなくて?」


 クロスが問うた。


『確かにドラゴンに似せるための能力をツギハギにしている状態は、合成妖魔キメラと言えなくもないが。溜め過ぎた能力値ステータス人間フォルクの器に収まりきらなくなり器のカタチが変わっているのじゃから、すなわち妖魔化ガルドナイズであろう。毒まんじゅうの実際の姿が今どうなっているかは解らぬが、あのドラゴンのような姿は幻獣族ファンタズマの持つ全像術イヤルク特殊技能スキルで視せているだけであろう』

「しかし、アルバーラはジェラートも喰ってしまったんだろう? 神耶族イルン能力値ステータスの10%を得ているんじゃないのか?」

彼奴きゃつの目的は、神耶族イルンを隷属させることじゃ。簡単に喰うわけなかろ


 きっぱりと、タクトは言った。


「ああ、そうだった…。スゲェ勢いで弟子を喰ってたから、てっきり錯覚してたよ…」

彼奴きゃつの胸に湧き出たアレは、核化フィルギナイズされたジェラートじゃろう』

「でも核化フィルギナイズじゅつの顕現までに、三日ぐらい掛かるんじゃないの?」


 おのれの知る常識の感覚で、クロスはそう訊いたのだが。

 タクトは冷笑のような、笑みを浮かべる。


人間フォルクの拙い能力では、そうであろ。実際に儂が完全に変化するまでに、二日ほど掛かっておるからな。だが毒まんじゅうは下級の幻獣族ファンタズマまで喰って、かなり魔力ガルドルの底上げをしたようじゃし。使うのも二度目とあって、手慣れたところもあろうし』

「それで、おまえとジェラートに掛かっているそのじゅつは、どうやったら解けるんだ?」

『簡単じゃな。掛けた相手を倒せば良い』

「少しも簡単じゃないじゃないか」

『まあ、どの程度の幻獣族ファンタズマを、どのくらい喰ったか判らんところが手痛いの』

「それは、下級といえど幻獣族ファンタズマでしょ、数年の間に何十体も集められるモンじゃないと思うよ。集めまくって十体かそこらが、精々の量じゃないかな」

『ふむ。ならば相手の能力は、下級の幻獣族ファンタズマ程度と見ておけば、トントン・・・・じゃろう』


 これからの戦いに先方の戦力を推し量るクロスとタクトに、マハトが遠慮がちに問うた。


「話は全部ちゃんと聞いておきたいんだが、こんなに悠長にしていていいのか? あのドラゴンがいつこちらにるか、分からないだろう」

「あ、それは大丈夫だよ。この屋敷は、出入り口以外は結界フルンドで外に出られないから、あっちは絶対、追いかけるより出てくるの待つほうが得策って考えてると思う」

 クロスの答えに、マハトは安心したように頷いた。

「そうか、それなら質問させてもらいたいんだが、あいつはなぜ、体内に取り込んだジェラートを、わざわざ胸に浮き出させてるんだ?」

『あれはジェラートが逃げ出そうとしておる、と言うのが正しい。じゃが、あのカボチャ頭めが、どうせ出るならもっと柔らかい部分を狙えばよかろうに』

「ドラゴンに柔らかい部分なんてあるのか?」

『どんなにウロコでがっちり身を固めている生き物でも、関節の内側や耳の後ろなど、折れ曲がっている部分は弱いに決まっておるわ』

「あの、飲み込まれた状態で、ソコを狙って出るのも、一苦労だと思うけど…」


 ぼそっと呟いたクロスを、タクトは冷たい目線で睨む。


『とにかくじゃ! ミッションは二つ、ジェラートの透晶珠リーヴィを無傷で取り戻すこと! あの毒まんじゅうの息の根をめること、じゃ!』

「だからそう簡単に言われても…」

『策はある! これから作戦を説明するから、良く聞けい』

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