アルバーラがクロスの存在を知ったのは、自身と同じく光輝石を色名付きに変えた者がいると教えられた時だった。
向こうが透けて見えるほどの光輝石は、その属性ごとに色名付きと呼ばれ、アルバーラは紅光輝石を顕現させた。
そしてクロスは、白光輝石だったと言う。
暗黙の評価として、魔導士は治癒系よりも攻撃系、魔力はより高い者の方が上と見られている。
属性に上下は無いと謳われているが、透明度の高い光輝石を発現していても、紅光輝石より白光輝石が優秀と見られがちな風潮もあった。
自分と同じか、もしくはそれ以上の魔力を持つ可能性のあるクロスを、アルバーラは最初非常に警戒した。
自分の幻像術を看破した者は、今まで一人もいなかったが、それは単に周囲の者が自分より魔力の低い、フシ穴のような目を持った者ばかりだった所為かもしれない…と思ったからだ。
しかし、実際に顔を合わせたところ、クロスはそれといった様子を見せなかった。
故にアルバーラは、自分の術の技術力に自信を持ち、クロスを惑わし騙しおおせるのだと、確信した。
しかしある時、アルバーラはクロスと視線が合った。
アルバーラの幻像術では、スラリと背の高い、プロポーションの整った美貌の女に見えているはずであり、大概の者はアルバーラと話す時、視線はアルバーラの顔よりも遥かに上を見ている。
最初は偶然…というか、人によっては、幻像術で作った豊満なバストを凝視する失礼な者も存在するために、クロスもその手合かと思った。
だが、胸はせいぜいアルバーラの頭の辺りにあり、しかも視線は度々合う。
というか、クロスがアルバーラになんらかの物言いをする時、しっかりとこちらを見据えているのだ。
つまりそれは、クロスには真実の姿が視えている…と言うことになる。
視えているのにずっと、視えていないふりをして、容姿を誤魔化している自分を内心で嘲笑し、見下していたのだ。
そう思った瞬間、アルバーラの内にあった鬱屈した憤りは、クロスに向かって凝縮した。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!