「…えーと」
さっきも言ったが、彼女とは初対面だ。
この「世界」では。
かつて、私たちは親友だった。
まあそれはずいぶん昔のことなんだけど、…と、それは今は別にいいか。
楓。
私はあんたを救いに来た。
頑固なあんたが、黙って言うことを聞くように、ちゃんと作戦も練ってきた。
とっておきなんだぞ?
大体、あんたはいつもいつも…
「…誰…ですか?」
さっきも言ったけど、彼女と私は“初対面”だ。
だから彼女の反応は至極真っ当で、少しも変じゃない。
だけどそんな顔すんなよ。
この頃のあんたと会うのは、久しぶりなんだからさ?
「あんたの友達や」
友達で、親友。
自己紹介を忘れてた。
私は、桐崎千冬。
あんたと同い年で、どこにでもいる女子高生だ。
説明すると長くなるから、以下省略。
キーちゃんって呼んでくれたらいいよ?
昔のように。
「キー…ちゃん?」
「呼びやすいやろ?」
「えっ、…はい、まあ」
「今時間ある?」
「これから学校なんですけど」
「ってことは、時間があるってことやな?」
「ええ!?」
こんなとこで話すのもなんだ。
とりあえずそこのスタバに寄ろう。
あんたの好きな抹茶ラテを奢ってあげる。
あとプリンも。
「ちょちょちょ…!」
無理やり手を引っ張ると、楓は嫌がった。
抹茶だけじゃ足りないか?
しょうがない。
だったら——
「学校ですってば!」
「1日くらいええやん」
「よくないですよ!大体誰ですかあなた!」
「せやから言うとるやろ?“友達“やって」
「知らないですけど」
…はあ、かったるい。
どうせこんな展開になるだろうとは思ってた。
他にも色々プランはあったんだけど、ストレートに言った方が手っ取り早いじゃん?
やましいことなんてひとつもないんだから。
「木崎亮平のことは?」
「…え?」
「アイツのことは知っとるな?」
「…ああ、はい」
「私はアイツの友達や。せやから、あんたとも友達。この理屈、わかる?」
ほんとは、違う。
亮平とは友達だけど、それ以前に、楓とはずっと以前から友達だ。
でもこう言った方が、きっと楓の耳には届く。
今、アイツのことをあんたがどう思ってるのかはわからないが、さっきよりはだいぶマシでしょ?
“見ず知らずの女子高生から声をかけられた”ってシチュエーションより。
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