時計を見た。
時刻は7時20分。
バスを降りて、大通りに出て、見晴らしのいい歩道橋のど真ん中で、すれ違う人の流れを見てた。
相変わらず賑やかな街だ。
錆びた柵の上に肘をつき、流れていく景色を追いかける。
と言っても、別に景色を眺めたかったわけじゃない。
探してたんだ。
この道を通るのを知っていたから。
——友達で、幼馴染。
私のよく知っている、1人の女子高生を。
5分くらい経って、次第に車の流れも多くなった。
会社に向かう人、学校までの通り道。
眩しい反射光がフロントガラスにぶつかり、チカチカと煌めいている。
コンクリートが揺れている音が聞こえた。
アスファルトに染み込んだ大都会の騒がしさが、地鳴りを上げながら近づいてくる。
見慣れたシルエットが横切ったのは、唐突と言えば“唐突”だった。
雲ひとつない空。
ビルの隙間に落ちてくる、青。
街中の交差点を渡ろうとしていた。
神戸高校の制服を来て、どすっぴんのボーイッシュヘアー。
…相変わらず、手入れも何も行き届いていないな。
歩道橋から見下ろしてた。
信号が変わるのを待っている、彼女の姿を。
とりあえず、元気そうで何よりだよ。
サプライズでこっそり後ろから声をかけようと思ったが、やめにした。
どうせなら、もっとびっくりさせようと思ったんだ。
例えば、ほら、急に背中を押した時のように。
「楓!」
ヒッ!
と驚いた様子で、彼女は視線を上げた。
歩道橋の柵を掴み、私は身を乗り出してた。
やっぱ、第一印象って大事だろ?
彼女とこの世界で会うのは初めてだ。
だから、思いっきり声を出そうと思ったんだ。
久しぶり!
なんて、照れ臭くて言えないから。
ドタドタドタドタッ
階段を駆け降りて、そのまま立ち止まっている彼女のそばまで一気に走った。
少し怯えてる気がしなくもないが、まあ良しとしよう。
逃げられないだけマシだ。
楓は足が速いから、逃げられたら追いつけない。
だからセーフ。
膝に手をついて息を整え、落ち着いたところで顔を上げた。
「おはよう!」
そう言うと、彼女は首を傾げた。
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