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第二話 中足を制する者は霜山を制す⑤

公開日時: 2021年12月30日(木) 21:56
文字数:1,799



『私はお前の正体を知っている。放課後、ロードプルの4階に来い。』


『昨日はどうしても行けなかった。行きたかったけども。』



何その自分のせいじゃないですよアピールは。


何か理由があったのね。


知らんけど。


確かにそれっぽいヤツは居なかったけどさ


もうよくない?


一緒のクラスなんだろ?今来いよ、今。


まいいや


こんなストーカー野郎の事よりもオレにはやることがある


昨日、担任が言ってたことについてオレは考えた


助けてほしければまずこっちから助けに行け


その意味を。


霜山を“助ける”ためには何をすればいいのか


オレは死にものぐるいで考えた


そしてある一つの答えを導き出した


霜山は太っている。


そう


霜山は太っている!




「霜山ぁ」


「....。」


こいつが話しかけてくると嫌な予感しかしないんだが


「何か用?」


「いきなりであれなんだけどさ」


「うん」


「お前さ」


「うん」


「痩せたくね?」










デリカシーが無いなと思いました。


朝から席に着くなりよくそんな事が言えます


これだけ素直に思ってることを口に出せることはある意味才能です。



「はー?」


「痩せたくないかと聞いている。」


その願い叶えてしんぜよう的な何かを感じます


「いつ頃から太りだしたんだ?」


「おいっ!」


「お前何なんだっ!」


霜山くんが正常です。


「負けるには必ず原因がある」


「は?」


「結果には必ず原因があって、原因を突き止めなきゃ問題は解決しない」


「ずっと同じ負け方をするだけだ」


「なんだそれ」


「何かキッカケはなかったのか?」


「....」


「別にただ食い過ぎただけだ...」



冷静になった霜山くんは目だけうつむいて何かを思い出してるみたいでした


自分のことは自分が一番分かってる


それを他の人に再認識させられるのってなんか落ち込みます


霜山くんには何か原因がありそうです。













中学の時柔道部だった


先輩は怖いし


練習はキツいし


モテないし


いつ辞めるかばかり考えてた


部活が終わった後はいつも脱け殻状態で夜飯がオレにとって人生最大の楽しみだった


毎日かき氷みたく山盛りにした白メシを、母さんが作ってくれたおかずでかきこむのが好きだった


支えがあったから何とか練習に耐えられた


こんなオレでも三年間柔道部を真っ当できた


オレが太り出したのは引退してからだ


柔道やってるヤツは大体ゴリラ化する。


顔もふくれて手足もゴチゴチになって


筋肉の鎧のはずなのに世界で一番モテない体型になる


だからオレは引退したら痩せると決めたんだ


それなのに...





「太った原因ってじゃあ母ちゃんか?」


「オレが毎日喜んで食ってたから引退してもまだ同じ量を作るんだと思う」


「減らしてくれって言っても次の日にはまた同じ量が出てくるんだよ」


「そういうのが続いて、ついムカついてケンカになったことがある」


「ギクシャクするの嫌だから我慢して食うことにしたんだよ」




オレんちと一緒じゃねぇか。


分かるわ。


やめてくれって言ってもやるんだよ母親って。


ウザいけどそれが優しさってこっちも分かるから受け入れてしまう


でもそれじゃあ霜山は痩せられないままだ




「オレんちさ、父ちゃん居なくて母ちゃんだけなんだ」


「え?」


「だからメシは大体買って食うんだけどさ」


「おう、そうなんだ」


「仕事が休みの時はバカみたいに飯作るんだよ」


「オレはそれがすごい嫌で何回もケンカになった」


「3日も同じメシなんか食ってられん」


「感謝はしてる。でも限度ってもんがある」


「たとえ優しさであっても押し付けた途端それは嫌がらせに変わる」


「だから伝えた。何回も何回も」


原津森って言いたいことバカスカ言うけど


それって結構すごいことなのかもしれん


「中足には2種類あるんだ、霜山」


「は?」


「オレの好きなゲームの話だ」


やっぱり分かんないわコイツ。


「一つは攻めて来た相手を間合いに入らせないように先置きして出す中足」


「いわゆる“あっち行け”をするわけだ」


「何の話だよ」


「まあ聞けって」


いきなりで何言ってるか分からないけど


ゲームの話をし始めてからの原津森の顔はマジだ


「もう一つはこっちから距離を詰めて相手に当てに行く攻めの中足」


「単純な話で、相手の間合いに入り込んで攻撃を仕掛けに行くわけだ」


「今のお前は、最初に言った方の中足だ」


「母ちゃんのやることに対してあっち行けしてるだけ」


「それじゃあ伝わらない」


「納得がいってないのに黙ってるのは敗北だ」


「本当にほしいものを手に入れたければ踏み込むしかないんだよ」


「あっちいけじゃなくて、ちゃんと戦えよ霜山」










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