ゾンビには何本かの管が刺してあり、それぞれのベッドにモニターの機械。
「心臓はなくてもゾンビは動く。血流で生きてるか判断出来るのじゃ。血流といっても、血管に血液は通っとらん。だから白いのじゃ。骨の中に血液が流れておるのじゃ」
先生はゾンビの腕を取って見せた。
「麻酔も毒もアルコールも効果はない。すぐに排出される。焼いても酸をかけても、タンパク質を摂取すれば細胞は作られてく。さて、次の部屋に行こう」
「ワシはな、どうしても不死の身体になりたいんじゃ。君みたいにな」
次の部屋にはゾンビはいなく、たくさんのバッテリーが積まれている。先生は革手袋をはめながら言った。
「さて、生きたゾンビを連れて来れたか分かるか?どうやって掴まれずに実験台に出来たか?答えはこうじゃよ」
先生は二本の棒を俺に刺した。途端、俺の全身は硬直し動かなくなり倒れた。
志織が俺にしがみつこうとする。複数の医者が部屋に来て志織を羽交い締めにした。志織の叫び声が消える。
「電流を流すと筋肉が硬直するのじゃ。すぐには治らん。君には悪いが、殺しはせん。どうせ死なないしな。少しだけ脳みそをもらうだけじゃて」
先生はしゃがみ込んで、俺にだけ聞こえるように言った。
「これは人類にとって大きな進歩なんじゃよ。不老不死の力を手に入れられる。君はゾンビなんだ。ワシは違う。不老不死の人間になるんじゃ」
担架に乗せられる。意識はあるのに身体が動かない。志織の姿も見えない。目隠しをされる。
先生は言った。細かくされても生きてる。と。だがどうやって復活するというのか?それよりも志織が心配だ。守るべきなのに。志織に悲鳴をあげさせてしまった。それが悔しくて頭がおかしくなりそうだった。だが指すら動かない。せめて話だけでも出来れば。舌に意識を集中する。
手術部屋。服を脱がされる。手足を縛られる。手術台。ライトの明かり。先生が手術服に着替えていた。俺の目を覗いて言った。
「麻酔は必要ないよな」
俺の舌はピクリとしない。電動刃物。手足を切られた。痛みは無いが、切られてく感触は分かる。血液を吸われてる。思考がダルくなるのが分かる。目を開けてるのすら億劫になる。俺の舌は動かない。
「さて、これで暴れても大丈夫じゃ」
今度は髪の毛を電気バリカンで切られてる。耳の上に穴を開けられる。ドリルの機械音が俺の全てになる感覚に陥る。濁流が流れる地下水の中にいるようだった。その濁流の中で俺は真下に流れ落ちてく感覚。
「頭蓋骨切開」
誰かの声が響く。いつの間にか濁流から暗闇の洞窟の中にいる感覚。数字が浮かび上がる。漢字が浮かび上がる。火事だと言う声。洞窟の中でその言葉が響き渡りこだまする。洞窟全体がグルグルと回り出す。箱の中に入れられて振り回されてる感覚。上下左右どこにいるのか分からない。突然放り出され、宙に浮いた感覚。そこで俺の意識は無くなった。
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