ヒロがそこそこ強くなった頃に、
「秦の始皇帝を倒そうよ」
とトニが静かに言った。
「エイか。絶望的に無理だろ?」
パルが反対する。ヒロが私を見たので説明する。
「莫大な量のパーティクルを持ったポピュレーターをカーリーと言うのよ。カーリーで有名なのは、マヤ文明の王ウキト。それからアステカ、インカ時代の王達を操っていたバイ。エジプト時代のファラオやクレオバトラを操っていたカニ。そして秦の始皇帝を操っていたエイ。この三人ね。ポピュレーターなら誰もが知る有名なカーリー。生贄を求めてた時代はカーリー達の全盛期だったのよ」
「他にも居るの?」
ヒロが尋ねる。
「居るけど表には全く出てこないな。名前すら分からん。ドラキュラや天狗とは呼ばれてるのは、俺達だけど」
トニが答える。
「ポピュレーターならたくさんいるわ。人間が知らないだけで」
「エイなら倒せそうじゃね?」
トニがまだ言う。
「タゥオーが居ても無理だな」
ダビが答える。
「タゥオーってそんなに強いの?」
ヒロが口を開く。
「中国暗殺武術の元祖よ」
ダビが答えた。
「ゾンビじゃなかったんだ」
ヒロが呟くように言う。
「ゾンビって死人が蘇った生きた肉体の事だろ。AZはパーティクルで生きたまま脳を固める。死んだ人間は誰も動かせねぇよ」
トニが答えた。
「何の為に?」
ヒロが聞いた。
「そりゃAZにしか知らないよ。俺達も人間に聞きたい。人間は何の為に生きてるのかを。なっ、答えられないだろ」
「AZを見た事は?」
ヒロが質問していく。私に聞けばいいのに。と思う。私がずっと隠し事をしていたから信用してないのかも。と少しだけ悲しくなる。
「心の中に色々な自分が居るのをヒロは分かるだろ。右に行くか左に行くか、まっすぐ行くかを悩む時。実はそれぞれが独立した自分なんだ。それを統一してるのが心。それがAZ。AZは見えないが確かに在る」
ダビの答え。
「言葉にすると難しいよな」
トニが言う。ヒロ以外は納得した顔。ヒロは分かってくれただろうか。
「これから人間はどうなるのですか?」
「審判の日が終わると、それぞれの国の権力者が国をまた復活させるさ。当分AZが操るだろうが、また人間に任せる。だからまた人間が増えるだろう」
「AZは支配しないのですか?」
「アリの世界を人間が支配してるか?」
ダビがヒロへ逆に質問した。それが答え。私は黙ったまま。私に聞いてくれたらいいのに。
「地球は皆の物だ。地球の危機の時だけAZが動く」
「今まであったのですね」
「マヤ文明の時そうだった。ただ、あれはバイが悪い。知識を教え過ぎた」
とダビ。
「ダビはカーリーですか?」
ダビは首を振りながら言った。
「なりたいとは思ってる」
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