ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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志織の小説.14

公開日時: 2021年2月10日(水) 09:41
文字数:1,088

  ヒロがそこそこ強くなった頃に、

「秦の始皇帝を倒そうよ」

  とトニが静かに言った。

「エイか。絶望的に無理だろ?」

  パルが反対する。ヒロが私を見たので説明する。

「莫大な量のパーティクルを持ったポピュレーターをカーリーと言うのよ。カーリーで有名なのは、マヤ文明の王ウキト。それからアステカ、インカ時代の王達を操っていたバイ。エジプト時代のファラオやクレオバトラを操っていたカニ。そして秦の始皇帝を操っていたエイ。この三人ね。ポピュレーターなら誰もが知る有名なカーリー。生贄を求めてた時代はカーリー達の全盛期だったのよ」

「他にも居るの?」

  ヒロが尋ねる。

「居るけど表には全く出てこないな。名前すら分からん。ドラキュラや天狗とは呼ばれてるのは、俺達だけど」

  トニが答える。

「ポピュレーターならたくさんいるわ。人間が知らないだけで」

「エイなら倒せそうじゃね?」

  トニがまだ言う。

「タゥオーが居ても無理だな」

  ダビが答える。

「タゥオーってそんなに強いの?」

  ヒロが口を開く。

「中国暗殺武術の元祖よ」

ダビが答えた。

「ゾンビじゃなかったんだ」

  ヒロが呟くように言う。

「ゾンビって死人が蘇った生きた肉体の事だろ。AZはパーティクルで生きたまま脳を固める。死んだ人間は誰も動かせねぇよ」

  トニが答えた。

「何の為に?」

  ヒロが聞いた。

「そりゃAZにしか知らないよ。俺達も人間に聞きたい。人間は何の為に生きてるのかを。なっ、答えられないだろ」


「AZを見た事は?」

  ヒロが質問していく。私に聞けばいいのに。と思う。私がずっと隠し事をしていたから信用してないのかも。と少しだけ悲しくなる。


「心の中に色々な自分が居るのをヒロは分かるだろ。右に行くか左に行くか、まっすぐ行くかを悩む時。実はそれぞれが独立した自分なんだ。それを統一してるのが心。それがAZ。AZは見えないが確かに在る」

  ダビの答え。

「言葉にすると難しいよな」

  トニが言う。ヒロ以外は納得した顔。ヒロは分かってくれただろうか。


「これから人間はどうなるのですか?」

「審判の日が終わると、それぞれの国の権力者が国をまた復活させるさ。当分AZが操るだろうが、また人間に任せる。だからまた人間が増えるだろう」


「AZは支配しないのですか?」

「アリの世界を人間が支配してるか?」

  ダビがヒロへ逆に質問した。それが答え。私は黙ったまま。私に聞いてくれたらいいのに。


「地球は皆の物だ。地球の危機の時だけAZが動く」

「今まであったのですね」

「マヤ文明の時そうだった。ただ、あれはバイが悪い。知識を教え過ぎた」

  とダビ。

「ダビはカーリーですか?」

  ダビは首を振りながら言った。

「なりたいとは思ってる」


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