ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.34

公開日時: 2020年10月25日(日) 08:31
文字数:1,115

  夕方になって男は二階に上がって来た。足元の薬を見て、俺は病気じゃないぞ。と怒り出す。俺は、予防です。風邪の予防。と言ってなだめた。男は薬を掻き集めながら「これは予防薬だからな」と何回か言う。俺はその度深く相槌を打つ。俺に出来る事はこれ位だ。


「さてと、必要な物を取りに行く」

  軍手を渡される。三人共新品の軍手。ハシゴを降りる。これを着ろと言われる。雨ガッパの上下。ゾンビが近くに居るのもおかまいなしに服の上から着る。

「この時間ならゾンビは襲わない」

  男はゾンビの肩に手をおいてズボンを履いた。頼り甲斐があるのか、危ないのか全く分からない。万が一掴まれたら骨が折れるというのに。

「夜でも襲うゾンビが居ますよ」

  俺は言った。

「そんなもん居たらとっくに襲ってくるわい」

  男は鼻をならす。農◯の店に入る。男はスタスタと農機具の所に行く。目星は付けてあるのだろう。工具を広げ、ボルトを外していく。車輪の付いた工具入れに色々な物を入れて、

「おい、これを右側のシャッターの赤いマークの前に置いて来い。赤だぞ」

  と言った。俺は言われたまま、ガラガラと工具入れを押して持って行く。男は次々と農機具のボルトやネジを外している。

  スーパーのシャッターには色ペンキでマルのマークが三箇所書いてあった。その一つが赤いマーク。そこに置く。人の気配はないが急いで戻る。すでに次のカートが荷物を積んで置いてある。同じ所に。と言われ往復する。


  だんだんと日が沈み暗くなりオーロラが現われる。

「よし、休憩だ」と言って男は地べたに座る。俺達も真似をする。「お茶持ってきたぞ」と紙コップを出し注ぐ。

  男は懐中電灯の光を消した。外の向こう側から光がチラホラ見えた。人間が道路をやって来る。男は座ったまま。俺達も動かない。

「一人なら大丈夫だ」男はそれだけ言ってまた黙った。目の前の道路を人間が一人通り過ぎて行った。男はまた懐中電灯を付けた。

「なぜ分かったのですか?」

  俺は聞いた。

「普通、分かるだろ」

  男は答えた。多分この男は本気で分かるのだろう。カンなのか感覚なのかは分からないが。

「よし帰るか」

と男は立ち上がる。男はゾンビを押しのけて歩く。その後ろに俺達は付いていく。俺はこれだけ堂々とゾンビの群れの中を通る事はしない。雨ガッパと手袋を外してからハシゴに上がる。男は脱いだ雨ガッパをゾンビにかぶせた。手袋は森の方に投げ捨てる。使い捨てらしい。

  男は缶詰と飲み物を慎重に吟味し俺達に渡す。男の分は手に持ったまま。「明日の夜には終わるからな」そう言い残し一階へ降りて行った。


  俺達は食べながら下の男の事を話ししあう。志織はサヴァンかも。と言った。サヴァンの意味が分からない。ネットがあれば調べられる。


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