ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.9

公開日時: 2020年9月25日(金) 17:44
文字数:1,258

  101号室から鍵を開けてく。中に人間やゾンビは居ない。風呂に水を張る。水は勢いよく出た。ポットと洗面台に水を入れて。と俺は言った。志織は素直に動く。


  シーツを取り、階段近くの廊下に綺麗に広げる。志織に何をしてるか聞かれる。

「もしゾンビか人間が来たら分かるだろ」

  俺は答えた。本当ならバリケードを作りたい。でもまずは水貯めだ。


  順番に部屋に入り水を貯めていく。貯めてる間に部屋を物色。廊下の奥、非常口階段に繋がるドアが開いている。各階に繋がっている。ゾンビが登ってくるとは思えないが人間なら。

  鍵をかけても、人間なら屋根伝いにガラスを割ってホテルに入られる。隠れる場所を最上階に決めた。最上階で心配なのは火事だけだと思う。万一に備えて屋上から逃げられる算段もしなければならない。


  三階の廊下。不自然に机や椅子が積まれていた。人間がやった証拠。

  志織に、助けて。誰か居ませんか?と言ってもらう。子供の、しかも女の子の声なら出て来る可能性が高い。しかし、現れず。

  仕方なく、鍵を使い端の部屋から開けてく。304号室の鍵が無い。ここで初めてマスターキーがある事を知った。


  恐る恐るドアを開ける。何かが動いた。発光した二体の人間。いや、ゾンビだった。男女。恋人か夫婦。少なくともバリケードを作ってる間は人間だったに違いない。俺はソッとドアを閉めた。

「他の部屋にもいるかも」

  志織が小さな声で言った。バリケードを作ったのは他の人。その可能性が高い。俺には思いつかなかった。


  部屋の中でどうやってゾンビになったのだろう。空気感染なのか?それなら志織もゾンビになってるはずだ。まさか抗体とか大丈夫な人間なのか?ゲームや映画なら、そんな設定もあり得る。現実は信じられない。妄想が膨らむのを抑え込む。とにかく部屋の中の確認と水の確保。


  次々と部屋を開けてくが誰も居ない。305号室。ベッドが錯乱していた。誰かが居た証拠。鍵が置いてあった。隠れる場所。ユニットバスには居ない。入り口近くにある通風孔。開くが人が入れる大きさではない。

  移動したのか?移動したなら、最上階かもしれない。


  四階はバリケードは無かった。どの部屋にも人はいなかった。五階。廊下にゾンビが居た。こちらにやって来るが何故か一定以上近寄らない。俺が少し進む。ゾンビはその分下がる。


  ゾンビを気にしながら501号室を開ける。中には誰も居ない。志織を入れてから俺はゾンビにゆっくりと近づく。ゾンビは向きを変え離れていく。

最奥の505号室を過ぎゾンビは非常階段の行き止まりで止まる。


  追い出せそう。と俺は考え、いったん離れた。ゾンビの脇を通り抜ける事は出来る。出来るが襲われたどうする?ゾンビの動作は緩慢。蹴りを入れるとよろけ倒れた。その上を飛び越え非常階段を開ける。起き上がろうとするゾンビを再び飛び越える。起き上がるのを待って近づく。俺から逃げるように非常階段のドアから出て行った。俺は急いでドアを閉め鍵をかけた。


  ゲームの世界ならイージーモード。そんな事を思った。現実はこれだけでも充分ベリーハードだ。


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