ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
sadojam

現実.74

公開日時: 2021年1月17日(日) 08:27
文字数:1,145

  何年ぶりに人間の遺体を食べたのだろうか。ずっとゾンビばかりだった。体感が軽く感じる。食べ終われば、罪悪感や嫌悪感は消え、意識と思考は今と未来に向かう。


  やるべき事を考える。


  服で血を拭き、ベランダから三階にある全てドアの鍵を開けた。血が付くので、部屋の中は志織に見てもらう。

  男の部屋は血まみれ。もう使えない。ベランダから下を覗く。道路にはたくさんのビニール袋と液体の入ったペットボトル。男の排泄物が入ってると思った。

  人間の居る部屋を確認する時にこれは使える。俺は排泄しないから、すっかり忘れていた。

  食料も水もなかった。確かに痩せていた気もしたが、うろ覚え。食べる前にしっかり確認しとけばよかったと後悔。


  ウィスキーがあるが身体を洗うには足りない。未使用のビニール袋の束。たくさんの空のペットボトル。服。本。雑誌。医薬品がある。

  この部屋を家探しする。志織が戻って来る。

「住めそうよ」と言ってまた廊下に出た。部屋を物色してる最中だろう。

  俺はベランダから二階のベランダに降りて、二階の窓から全てのドアの鍵を開けた。荷台を持ち上げ、塀の裏に隠す。

  水を探さないといけない。最近はマンホールを開けるようにしている。汚いが生活汚水は流れないので、身体を洗うだけなら大丈夫な場所があった。多分、雨の排水用にも使われてる下水道。だが、ここら辺りのマンホールを開けたが中はどれも汚かった。


  一度、部屋に戻り志織に身体を洗うのと飲み水を探しに行く事を伝える。

志織はポケットから鏡を出してみせた。俺はうなづく。

  定期的に志織のいるマンションを見とけば、何かあった時に志織が鏡で光を俺に向ける。光の反射で俺は気付く。だが暗くなれば反射はなくなるし、民家やビルに入れば分からなくなる。気休めにしかならないが損はない。


  スーパー。コンビニ。デパート。ほとんど何もない。どの店舗にもあるのが、筆記用具。洗剤。雑誌。化粧品。

探し場所はオフィスビル。マンション。アパートに変わる。家探しも生き延びてる人間が隠しそうな場所を探す事になる。不自然な家具の場所や、屋根裏。床下。


  後は飲食店。意外と倉庫に素材がある事が多い。加工しないと食べられないが贅沢は言えない。片栗粉、小麦粉、麩、かつ節。海苔。醤油や油缶。未開封であればケチャップの缶詰など。意外と穴場だったのが結婚式場。調理場がある。フルーツの缶詰やズッキーニなどの西洋野菜の缶詰があった。

  一番行きたい所は、カップ麺製造工場や缶詰加工工場。場所が知らないし、今はもう何もないだろう。


  時給自足出来る人間が今では一番強い。食べられる野草の知識。自然薯や百合根。蛇や鳥の捕り方と食べ方。水をろ過する方法も知っていれば。


  衣服や住まいに必要なのは山ほどある。釘もカナヅチもノコギリも探せば見つかる。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート