ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実144

公開日時: 2021年4月15日(木) 07:32
文字数:1,129

回収しないポピュレーターは異質。でも強制的ではない。

「回収しないポピュレーターっているの?」

俺は聞いた。

「滅多に居ないわね」

「回収しないでいられるの?こう…回収しなかったらどこかに異常をきたすとか」

回収しないとペナルティーを食らうのか?身体や精神に異常をきたすのか?

「回収してると、それが普通で当たり前の感覚になるわ」

回収する事は相手を殺す事。

俺の存在はAZにとって悪なのかも。ふとそんな事を思った。

「AZと話しをしたんだ。AZは確実に存在する。俺には一切手を出さないと言ってた。全ては暇潰し、退屈凌ぎらしい」

ある意味、AZの手の平で踊らされている。その事は言わなかった。志織もAZの一部だからだ。

「全てのポピュレーターに繋がっている。志織にも」

AZは俺と志織の関係を楽しんでるのか?

「AZが何を考えてるのか分からないわ。でも居るのは確かよ。それだけ。それで充分よ」

考えても仕方ない。と言いたいのだろう。俺は何でも理屈で納得したくなる。


「回収したくなったら言って」

俺はそれだけ言った。志織のしたいように。俺はそばに居られるだけでいい。理想は違うが現実的にそれが一番可能な願いだ。


二人どちらかともなく崖を登る。俺は小屋の屋根に登り周りを見渡す。発光体は見当たらない。本当にやって来るのか?

俺と志織。まだ赤く発光している。ダビデはまだ健在。殺されるとは思えない。


「ダビデは仲間のパーティクルも回収するとトニが言ってた」

「多分ね。私も襲われるわ」

志織の目が下を向く。志織は、絶対回収しに来る。と確信してる。

「志織はダビデの回収出来る?」

俺は聞いてみた。殺せるか?と聞きたかったが、言えなかった。

「どちらかなら。多分」

本体とパペットの二体相手は無理という事。

「ライフルで殺せるかな?」

志織を殺しに来るなら俺はダビデを殺せる。ダビデでなくても。

「強敵相手ならきっとパーティクルで包むと思うわ」

相手のパーティクルに包み込まれると肉体と思考が停止する。その代わり使う側は桁違いのパーティクルを使う。エイやカニはそうしてカーリーの地位を不動にしている。


「志織はダビデを包み込めるの?」

「無理ね。ダビデの半分も無いもの」

「包み込まれてしまう?」

「多分ね」

俺はため息を吐いた。やはり志織はパーティクルを回収しなければならない。

AZはこのシステムをどれだけ考えて創ったのだろうか。

殺し合わなくても回収出来るはずなのに、わざわざ回収し合わせるように仕組んでる。


退屈だから。その理由だけで。人間が地球をもっと大事にしてたら、ポピュレーター同士の戦いは起きない。また袋小路に辿り着く。考えても仕方ない事。それよりも、これからどうすべきか?


「トニやパルを探しに行こうか」

俺は意見を出した。

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