ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.21

公開日時: 2020年10月8日(木) 08:06
更新日時: 2020年10月14日(水) 21:12
文字数:1,301

  翌朝、志織はいつも通りだった。昨日の事を無かったかのように振る舞ってる。

  さて、どうしたものか。俺もなかったかのように接するべきか。と考えてた時、

「地震?」

  志織が口を開いた。と同時に遠くから地鳴りのような音。かすかな振動。ホテルが揺れてる。二人で外を見る。ビルとビルの間から黒煙。煙しか見えない。

「車じゃない?」

  志織の言葉。たくさんの戦車が走ってる音。国が救援に来たのかもしれない。屋上に行き、音のする方を望遠鏡で覗く。

  戦車ではなかったが、ショベルカーやブルドーザー、ダンプカーなどの重機が何台も続いて道路を進んでいる。その背後から、かなりの黒煙が舞い上がっている。ダンプカーの荷台にはたくさんの人間がいる。大型バスが一台。そのバスの中にも屋根の上にも人が乗っていた。


  やっと国が救助に来てくれたのかと思ったが、運転手は自衛隊や警察官が着てるような服ではなく私服だった。


「どうする?」

  志織は言った。助けてもらうべきか。そうなると俺はどうなる?せめて志織だけでも。でも昨日の事がある。物凄く悩む。

「俺はこんな身体だ。多分助けてくれないだろう。志織だけはイヤだろ?」

  こんなセリフしか言えなかった。


  ブルドーザーは車をどかしながらこちらに向かって来る。このままだと真下の道を通り過ぎる。志織は黙ったまま。


  俺の本心は志織と一緒に居たい。俺の方が志織を守ってやれる。

  そう言いたかった。言えなかった。


   煙が一層大きく立ち上がった。一番後ろのダンプカーから灯油かガソリンを撒き散らしゾンビを燃やしていた。燃えながら歩き続けるゾンビ達。

  ダンプカーの後ろからたくさんのゾンビが群れをなしている。千人か二千人か。ゾンビが道路を埋め尽くしている。見当がつかない。


  途中で先頭のブルドーザーが止まった。邪魔な大型車をどかそうとしてる。後続車も止まる。ゾンビは車の横や前にも近寄る。群がる。おぞましい光景。

  ブルドーザーが進んだが、何台か後ろの大型バスが動かない。タイヤのスリップ音が響く。進まない。バッグも試みてるが動かない。車輪の間にゾンビの血や肉が挟まり滑ってるみたいだ。

  後ろのダンプカーが前の動かそうとしてる大型バスを押す。反動で大型バスの屋根に乗ってた数人が転がり落ちる。それでもバスは動かない。


  ショベルカーが大型バスの周りのゾンビをどかす。潰す。持ち上げる。だが数が多い。まるでカブトムシに群がる大群のアリのよう。火ダルマのゾンビがダンプカーに辿り着く。ダンプカーはバッグし、ゾンビ達を轢いて行く。


  阿鼻叫喚。久しぶりに聞く志織以外の声が叫び声と助けを求める声。先頭のブルドーザーだけが先に進んだ。見限ったのか。もしくは先の道を空ける為にか。


  志織の返事を待つ必要はなかった。多分、大半の人間は死ぬ。焼かれるかゾンビに喰われるかで。

 この場所を移動する事を考える。

ホテルの前は他の場所よりもゾンビが多くいる。それでもダンプカーの後ろにいるゾンビとは比にならない。


  裏口から出る。荷物もそのまま。仕方ない。パンと言う音。多分タイヤが破裂した音だろう。更に大きな爆発音とガラスの割れる音も聞こえた。放置してある車かバイクが炎上したのだろう。


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