ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.44

公開日時: 2020年11月9日(月) 07:31
文字数:912

「とりあえず、病院を見回ろう」

  先生は廊下を出る。フルフェイスヘルメットをかぶるよう言われ、かぶり俺達もついて行く。どの病室にも家族や五、六人の人間が居た。誰もが大人しくベッドにいるか座っている。

「残念ながら全員は救えないのじゃ。家族連れを優先にしとる」

  怯えてるような子供。母親の心配する顔。隣の病室から中年の女性が出てくる。

「カズヒコは、私の息子はどこに?」

  先生に言い寄る。

「カズヒコ君は立派に、貴方方家族と人類の為に尽くしました。立派な息子さんです」

  先生の言葉。

「そんなのはどうでもいいんです。息子をどこにやったのですか?」

  女性は今にも泣き叫びそうだった。

「本来ならもう死んでるとこです。それに息子さんが居たから、貴方はここに住めるのです」

  先生は病室を覗き、

「父親も弟さんも安全な場所で安心してるでしょう。ちゃんと栄養を考えた食事も出してるはずです」

  先生の言葉になおも食い下がる女性。先生は病室に入りカーテンを開く。真下にはたくさんの人間達。

「またあそこに戻りたいですか?いつかはゾンビに襲われ無為な死を迎えますよ」

  母親はしゃがみ崩れる。

「弟さんと旦那さんの事も考えてあげてください」

  先生は母親の肩を叩き、廊下に出る。ため息を付く。

「仕方ない事なんじゃ。もうこれ以上医者を減らす訳にはいかんのじゃて」

  つまり何らかの人体実験をしていたという事。

「ネズミやウサギではダメなのじゃよ。仕方ない事なんじゃ。目先の人間の命を取るか人類全体の命を取るか。どちらが正しいんじゃ?」

  俺は黙ったまま。

「ワシにも分からん」

  先生は気を取り直して説明し始めた。

「さて、ゾンビになる原因から話すかの。今までに発見された事のない粒子が人間の脳に巣食うのだな。それで人間はゾンビになる。その粒子は宇宙から来たのか、地中からか海底からか。元々、体内にあってそれが変化したのかは分からん。とにかく今までにない粒子が脳みそを喰べてゾンビになるのじゃ。喰べてという言い方だが、脳と化学反応を起こす。脳は固形化し、ほとんどの機能が停止する。知能と感情の低下。だがな、大脳辺緑系の部分は逆に肥大するのじゃ」

  先生の部屋に戻る。ヘルメットを取りたまえ。と言われ、外す。


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