ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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志織の小説.1

公開日時: 2021年1月22日(金) 08:37
文字数:1,147

  何百年ぶりに指令が届いた。届いたというよりも直感のように指令が浮かんだ。

  雲に混ざってるアイポの動きが盛んで、あと数日だろうとの予想はしていた。でも実際の発動時間がこんなギリギリになって分かるとは思わなかった。


  発動時間。わずか五分後。

  空を見上げる。私の見える範囲にアイポは居ない。この一番大事な時に限って居ない。間が悪い。


  私が目星をつけてた個体は遠くにいて絶対に間に合わない。急いで代わりを探す。健康体で自己主張の無さそうな若い人間を。

  歩いてる主婦や中年のサラリーマン達の怯えてる人並みの中から、健康そうで大人しそうな若い男に私のパーティクルを送った。間に合うか?男は倒れる。

  まだ送ってる最中に、周りの人間が次々と他の人間を襲い始めた。車がぶつかる音。悲鳴。世界が騒然となる。

私は舌打ちを堪える。ついに始まった。


  落ち着いて送るものの、ダメ。とても間に合わない。パーティクルは途切れた。パーティクルがこぼれないように閉じてから急いで車内へと逃げこむ。こっちへ来て。と強く思う。男は起き上がるが、私の所には来ずに他の人間を襲い始めた。私は我慢していた舌打ちをする。失敗か?


  男は人間を喰べ始めてる。再びパーティクルを送ってみるが、穴は見つからない。無理やり入れようとするが弾かれる。

  まさかここで終わり?最悪だった。誰かを呼ぶしかない。だが近くに誰が居る?日本には何人居るのかしら?五百人?千人?


  男は我に返って自分を見て驚愕している。半分失敗したが半分成功した。

  私は急いで助けを求める。

  男はよろけながらも近付いて来た。


  どの程度の知能かどんな性格かを知る為に普通の人間のフリをする。

フリでなくとも私は人間と同じ身体になった。その身体にも慣れなければならない。


  男は必死になって私を助けてくれた。力は増えてる。思考も壊れていない。性格も良し。感情に身を任せない心もありそうだ。

  これは失敗ではない。足りない所は多いが補えばいい。


  私は車から出る。鼻に刺激。嗅覚が戻り敏感になっていた。血生臭い匂いが鼻腔をつく。私は思い切り吸った。懐かしくいい匂いだった。


  彼に守られながらスーパーに行く。お菓子とフルーツジュースを急いで口に入れる。美味しい。想像してた以上に美味しかった。今の食べ物はこんなにも美味しくなっていたのか。


  とりあえず休もうと言う男のままに私は従う。質問されない。次の行動を考えて動いている。大丈夫。失敗ではない。


  彼は力の加減にも気付いたし、不安や恐怖も抑え込めてる。現実に呑まれず目を背けてない。なかなかに良い。


  自己紹介。私の名前はシオリにした。日本人なら普通にある名前。彼をヒロと呼ぶ。それで充分認識出来る。


  ヒロは私に眠れと言う。気の使い方も良い。まだ早いが回収するために寝る。それに久しぶりの睡眠だ。


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