ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.11

公開日時: 2020年9月26日(土) 20:00
文字数:1,358

  部屋に戻り志織をベッドに寝さす。志織はすぐに寝入った。俺は寝れなかった。全く眠くなかった。寝不足は困ると思い横になり目をつぶって過ごすも眠気はない。気配さえ訪れない。


  過去の思い出が浮かぶ。親友のヨシオとの会話を思い出す。サバイバルの話だ。ゲームや漫画の話もしたが、今役に立つのはサバイバルの話。一番強い武器はショットガンだとヨシオは言う。俺はボウガンだとやりあった。

  調べると、ショットガンの大きな銃声で耳が鈍感になり近寄って来るゾンビに気付かない場合がある。ボウガンは連続して撃てないから、二の矢をセットする間にやられる可能性がある。との事。結局ひたすら逃げるしかないのだと。


  戦って勝ち続けるのはゲームか漫画、映画の世界。それも主人公だけだ。


  それでも噛まれたら終わるからと言って、防刃ベストは必須だな。とヨシオは真面目に購入した。俺はそこまで夢想主義者ではなかった。


  ヨシオの方が正しかったな。と俺はヨシオのアパートに行こうと決めた。生きていればいいな。と信じてない事を思った。


  携帯電話を見るがやはり圏外だった。分かってはいたが確認したくなる。電池は50%を切っていた。節電の為に切りたかったが切れなかった。切ると二度と元の世界へ戻らなくなるような気がした。


  志織がガバッと起き出し周りを見渡す。俺は大丈夫か?と声をかける。志織は現実に気付く。俺は聞いた。

「父さん、母さんは?」

  志織は、父さんは居ないと答え。少ししてから母さんは居るけど居ない。と答えた。

「ヒロは?」と志織の質問。田舎に両親と弟がいると答えた。


「居ないけど居るってどういう事?」

  聞いた答えは納得いくものだった。志織の母さんはホステスで、あまり志織を可愛がらなかったらしい。だからなのか最初に手にした食べ物はスナック菓子だった。

  死の危機。たくさんの死体や俺のおぞましい身体を見てたら普通、食欲なんてなくなる。むしろ放心状態か泣き叫ぶだけか。錯乱してもおかしくはない。ある意味志織はタフだ。都会の、それも一般的でない家庭で育った特有のタフさ。田舎で育った俺には無いタフさだ。


  なんだかんだ生き延びるのは志織の方かもな。と唐突に思った。少なくも甘ちゃんではない。車の中であんなに泣いてた弱々しさは今では嘘のように微塵も感じられなかった。


「母さんに会いたい?」

  一応聞いてみた。女の子なら会いたいと思うだろう。が、志織は首を振った。俺はそれ以上何も言えなかった。


  もし会いたいと言ったのなら志織の家に行こうと思っていた。


  明るくなってはきたが、時計は五時。志織は横になろうとはしないので、屋上見るか?と聞き、志織はうなづいた。


  水を充分飲ましてトイレに行かせてから部屋を出る。廊下の窓から下を覗く。何体かのゾンビがしゃがみ込み何かを食べている。食べてるのは死体しかない。


  屋上は風が強かった。ビル風だ。人はいない。隠れる場所も無い。

  貯水タンクがあった。いざとなればここから水を補給出来る。

  隣のビルに渡るのは難しい。長い板を渡り戸にすればいけそうだが、こんなに風が強いと厳しい。長いロープ…防災ホースで降りる事は出来る。俺には力があるし疲れもないので、志織をおぶって降りる事は可能だろう。ホースの長さが足りるかが問題だが。


  志織がアクビを一つ。俺もしてみたが眠気は全く訪れない。


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