ちょっとの力で服が破けてしまうから、かなり大きめの服を着る。動く時、筋肉の操作に意識が必要だった。大きなリュックを見つけ、そこに女の子の服を詰め込んだ。俺のはまたここに来ればいい。急いで帰らないと。
やるべき事はまだある。
夕方点けた車のライトが彷徨ってるゾンビを照らし出している。どのゾンビも死体を喰べてはいない。ウロウロしているだけ。
夜は喰べないのか?襲う事はないのだろうか?分からない。
ゾンビ達はどこに向かって歩いてるのすら分からない。法則性はないようにも思える。ただ俺が近付けば逃げていくだけだ。
ホテルに戻り自販機をどかす。指が折れた音が聞こえた。指が四本、綺麗に曲がっていた。力を入れ過ぎたのか。自販機の重さに耐えられないのだ。無痛症という病気は知ってる。きっとこんな感じなのか。
そう思いながら二階の防災トビラを開けた。真ん中の部屋のドアが開いていて女の子が顔を出していた。外から、車のライトで分かったのだろうか?俺は景色が灰色で分かるし、女の子が発光しているので分かった。
「お兄ちゃん?」
ドア越しに疑問形の言葉。俺は先ほどとは違う服装。それに両手もある。
左の壁を三三七拍子の調子で叩いた。
「遅くなってごめん。声も両手も治ったみたいだ」
先程折れたはずの指がもう治ってるのに気付く。治りが早いのにびっくりした。新しい発見が次々と見つかり、全部覚えきれるか心配になる。
部屋に入る。リュックを渡す。次にやるのは、各部屋を見回り、ゾンビや人間が居ないかの確認と浴槽の水貯めだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!