ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.97

公開日時: 2021年3月4日(木) 09:21
文字数:979

九州を通過する辺りで日が昇り始めた。思ってた以上に時間はかかった。

燃料が無くなる。とパルが言い、北九州空港に降りる。だが人間達が集まり、数分で離陸。


仕方なく航空自衛隊築城基地近くの山の砂利採取場に降り、トニとパルのパペットと俺の三人で自衛隊基地に向かう。


自衛隊基地の鉄柵にゾンビがまとわりついている。中に人間が居る証拠。

当然、拳銃を所持してるのだろう。

ポピュレーターは居ない。パルがそう言い切り、トニがうなづく。


俺達は鉄柵を何ヶ所も破きゾンビを基地の中へ入れた。しばらくして大きな爆発音。手榴弾かロケットランチャーか。それから連続した発砲音。


発砲音の数から人間は二十人以上居ると判断する。このゾンビの数では人間が生き残る。

「どうする?やるか?」

パルが聞く。燃料を得る為に人間を殺す。俺達が生き延びる為。弱肉強食の世界。だが返事は出来ない。


発砲音が止む。エンジンを吹かす音。続いて小さな地響き。戦車が現れて、まだ近づいてくるゾンビを次々と轢いていく。


「志織が戻れってさ」

パルが口を開く。俺は安堵する。


空の容器を持ったまま俺達は戻る。この選択は正しくはない。だがただ生き延びるだけではダメなのだ。

後悔や哀しみを背負ったまま生き延びてもつまらない。生き延びる意味がない。


欲望は少しずつでも肥大する。ただ志織と一緒に生き延びるだけでは物足りなくなってる。出来る限り志織と一緒に楽しく生き延びたい。


結局、沖縄は諦めて、九州と沖縄の間にある甑島列島の一つの島に住む事にした。

小高い丘の隅にヘリコプターを置く。パルが両手で持てる大きさの部品を外し、近くの廃屋の屋根裏に隠す。

その部品が無いとヘリコプターは絶対に動かないらしい。


眼下の小さな町に降り、草だらけの観光案内所の店舗をこじ開け、島のガイドと地図を手に入れる。


人口は六千人。長さ45キロ。幅10キロ。甑島列島は三つの島が橋で繋がっている。隠れキリシタンの住処の跡地が多く、洞窟がある。


港まで四時間かけて歩く。鹿児島と繋がる大きなフェリー船があり中に入る。人間が住んでいた形跡があったが人間はいない。

船内を拠点にするのも快適そうだが、人間やポピュレーターが真っ先に探される場所だろうから断念。

そこで夜になり、志織は睡眠。パルのパペットだけを残し、俺達四人は港町を探索。小さな商店街。やはりどこもかしこも荒らされていた。

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