志織が眠れない。と言うので、海沿いを歩き続ける事に。俺は顔に包帯を巻く。長袖と手袋。リュックを背負う。これでゾンビと間違えられる事はないだろう。女と女の子の二人連れ。まさか襲われるとは思えないが、万が一の為に志織にナイフを持たす。
会う人間は誰もが疲れきった顔をしていた。露骨に武装している者もいた。襲って来るのはよほどの好きモノか、殺しを快楽とする異常癖の人間だろう。食料は店屋や民家を探せばまだある。
第一目的は安全な場所。最上の願いは、大量の飲食物と薬。船と銃。ガソリンと弾丸。だがランクを下げざるえない。ガソリンなど要らない風力式のヨット。スリングショット。当面の食料、水。抗生物質。
スリングショット。ゴムで鉄玉を飛ばせる道具。弓矢より持ち運びがいいし、玉も地面に転がってる小石で充分。水は川か井戸さえあればいい。退屈な時間は筋トレでもすれば時間は潰せる。
適度なストレス回復。ここら辺りは贅沢な望みになるだろう。
そんな事を考えながら俺と志織はひたすら歩き続けた。
途中で使える自転車、バイク、車に乗った。進めば進む程、放置してある車やバイクのガソリンは空だった。ガソリンスタンドは電気がないので動かない。とあるガソリンスタンドではショベルカーで道路を掘った形跡があるものの途中で放置してあった。ショベルカーの燃料ゲージはゼロだった。
電気が無い。これほどまでに不便だとは思わなかった。立ち寄る店の中の物もほとんど無くなっていた。オモチャ屋でさえ、電池という電池が全て抜き取られていた。俺が考える事は誰かしら既に考えついてる事。
二階建てのスーパーを見つける。二階の一つの窓から灯りが見える。スーパーの壁際にはたくさんのゾンビがうろついている。一階の入り口や窓は全て、どこから集めて来たのか分からないが、鉄板がこれでもかと溶接してあった。これでは人間ですら中に入る事は難しい。
「おーい」
人間に初めて声をかけられた。窓から男の中年が手を振っている。
「お菓子なら分けてやるから情報をくれ」
中年の男が言う。手には望遠鏡と銃を持っていた。志織を見たが拒否する仕草は見られなかった。俺は志織を後ろに隠し近付く。
「お前ら二人だけか?」
おれは、そうだ。と答える。男は望遠鏡で周りを見渡す。
「質問はその子が答えろ」
と男が言った。
「お父さんやお兄ちゃんはどうした?」
質問に志織が「最初からいない」と返事する。
「東京はやっぱりダメか?自衛隊とかいたか?」
志織はうなづき、そして首を振る。
「上がるか?」
男は言った。志織は俺を見た。俺は小さく首を横に振る。
「あがらない」
志織は言った。男は笑いながら
「違いねぇ」と答え、
「正解だ。もう誰も信用出来ねぇ。だがな一回位は信じてみたらどうだ?」
「何故俺達なんだ?」
俺は言った。
「そりゃ女と子供だからよ。子供はウソが下手だ。すぐ分かる。かと言ってババアはダメだ。平気でつけあがる。若い女?俺は色気には騙されねぇ」
俺は迷ったが上がる事にする。俺が先に上がろうとすると、その子が先だと言う。志織はうなづく。先に上がらす。
「ちょい待ち。銃は置く」
男はハシゴを下ろした。
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