ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.61

公開日時: 2020年12月9日(水) 08:14
文字数:1,312

  十日位歩き続ける。さすがに志織の歩くスピードが極端に落ちる。

  接骨院で車イスを見つけ、志織を乗せて押してみた。ちょっとコツがいるがそれなりに進む。が志織がお尻が痛くなり歩いた方がマシだと言う。たいがいの道がガタガタ道。

  ポツンと高いマンションが見えた。周りを見てみたいと志織が言うので、思い切って最上階まで行く事にする。休めるようならそこで二、三日居てもいい。階段を通らせないようにすれば大丈夫だろう。

  俺はリュックを志織に背負わせ、志織をおぶる。そしてゾンビから離れる為に走る。転ばないように。

  高級マンション。入り口からして立派な建物。入り口からは入らない。人が居る可能性がある。地下の駐車場に行く。そこからもビルに入れるはず。

  地下はゾンビに囲まれる可能性が高いので、たいがい人はいない。裏口は運良く鍵はかかっていなかった。マンションに入る。あとはこの狭い通路や階段にゾンビがいなければいい。


  廊下はバリケードのように通路を塞いでなかった。人が住んでない可能性が高い。非常口階段。思ってたよりも暗い。曲がる時だけ気を付けて志織をおぶったまま、ゆっくりと階段を上がる。

  下からゾンビの来る気配はない。四十六階が最上階。俺は全く疲れない。

下でゾンビを一体でも連れてくればよかった。と思った。これだけ体力を使ったら多分俺の身体は弱まってると思う。

  最上階の廊下は綺麗だった。が廊下は思ってたよりも蒸し暑い。空調は電気で管理しているらしく開ける窓はなかった。部屋という部屋のドアを開けるが、どこも開かない。

  屋上への階段。遺体があった。干からびている。何カ月も前に死んだ死体。服をまさぐる。鍵を見つける。

どこの部屋か分からないから仕方なく片っ端からドアの鍵に差し込んでいく。電子キーでなくてよかった。

  四十六階の部屋のドアはどこも開かず、次の階に降りる。開かない。次の階。四十四階はなく、四十三階。真ん中辺りの部屋で開く。

  中は食べ散らかした大量のカップ麺。未開封のカップ麺はまだ残っていた。水は出ない。きっとあの干からびた遺体は水でも探し求めたのだろうか。

  部屋はシンプルな作りで、棚や机もそれほどなく、食べ散らかしたカップ麺以外は比較的綺麗だった。フローリングなので掃除はしやすい。窓を開けるとビル風が入り涼しい。二、三日ここで休める。俺は他の部屋のドアも開かないか試す。壊してみようと頑張ったが無理だった。

  窓から隣か下なら行けそうな気もするが、ここから落ちたら俺も無事では済まない。


  三十階までドアを開けながら降りる。どれも開かない。オートロック式のドアなのだろうか。ゾンビはいない。どの廊下は綺麗だ。人間は下の階から漁っていったのだろう。ここまで誰も来た形跡がない。確かに階段を登り降りする労力があるなら、違うマンションを探した方がマシだ。

  俺は疲れもないし時間もある。全てのドアを調べる。二十八階で鍵が落ちていた。何階のどの部屋の鍵か分からない。が、必ず一部屋は開くはず。二階まで降りた。どのドアも開かず、どのドアも鍵は違った。一階には部屋はなかった。

  残るは二十九階から上の部屋だ。急いで登る。上の階段から物音。


  志織?と声をかける。志織だった。


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