ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.138

公開日時: 2021年4月9日(金) 08:46
文字数:810

ビルの屋上は風が強い。俺は髪の毛を抑えながら眼下を見下ろす。真下は殺しあい、色の混ざった空気が敷きつめている。だがビルを挟んだ反対の道路は静かで一人もポピュレーターはいない。一人くらい隠れてたり傷を治したりするポピュレーターが居ても不思議はないのに。


殺しあってる左の道路と、誰もいない右の道路は別世界。道路を隔てるように立ち並んでるビルが刑務所の壁のように思える。


注意深く見ても右の道路側にはポピュレーターはいない。誰もが左の道路で殺しあいをしている。

ここでは俺が変なのだ。回収しに行くのが普通。回収する事が本能なのだろう。


以前何かで読んだ本か映画だかの内容を思い出した。

ウィルスが人間の細胞を食べつくすと、今度はウィルス同士が共食いをし始め人類滅亡の危機を回避した話。

その時、生き延びた人間は生存格率数%の仮死状態のコールドスリープした人間。そして南極に昔から住んでるイヌイット族の人間。

相対する近代科学と原始的な打開策を描いた物語だった。


だがポピュレーターはウィルスとは違う。思考や感情がある。なのに何故こんな無謀な事を。

人間が戦争を繰り返すのは民族的、宗教的の価値観の違いから。家族を守る為、そして欲望の為。間違っていようが目的がある。


ポピュレーター達は長生きする為。たくさんパーティクルを集めれば、長生き出来る。逆の見方だと、死にたくないはずなんだ。長生きしたい為に殺される可能性の高い事をする。矛盾している。

パルやトニを捜しながらも憶測は勝手に浮かぶ。考えても仕方ない事なのに。


真夜中まで捜すもこの辺りにはいないらしく、少しずつダビデの方へ移動していく。

暗いから、発光がより分かる。赤色は相変わらず徒党を組まずに戦っている。三つ巴以上の混戦。それぞれが見える範囲のポピュレーターを殺しあってる。


高い所から見ているせいで、自分が大きくなった気になる。大きくなって眼下のポピュレーター達を手や足で踏み潰したくなる。

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