外で灯りがチラリと見えた。三浦家の方の道路からの灯りが一つ。志織かな?と外に出る。俺は懐中電灯を点けてない。必要ない。
「あ、起きてた。それとも起こしちゃった?」
声でミズホさんと分かった。俺は顔の包帯を眼の下まであげ肌を隠す。
「どうしたんですか?」俺の問いに、眠れないの。の返事。
「ねぇ、何やってたの?」の問いに俺は小説書いてた。と言うのは恥ずかしく、寝ようと思ってた。と答えた。ミズホさんは、そう。と答え、その後少し沈黙。帰ろうとしない。
「ねぇ、ヒロさんも志織ちゃんも凄いね」
ミズホさんが口を開いた。俺はうなづく。「ツトムさん達も凄いよ」と言いたかったが、おべっかのようで言わなかった。
再び沈黙。多分、話を聞きに来たのだろう。俺はどちらかといえば小説を書きたかったし、話なら志織から聞いたはずだ。と思った。
「ねぇ、何考えてるの?」
「いや…なんでミズホさんが来たのかなぁ…って」
小説を書きたい。とは言えない。
「え?用がなきゃ、来たらダメなの?」
「いや、あの…危ないしね。夜のゾンビだって掴まれたら怪我するし」
あり得ない事だが、ミズホさんは俺に気があるのか?と思った。もしくは、まだツトムさんが俺達を信用してなくて、ミズホさんに親しくなれ。と言われたからかもしれない。多分、親しくなってもっと情報や本当の事を聞き出せ。と言われてるのだろう。それなら合点がいくし、筋も通る。
「今までここに来た人は皆助けを求めに来た人ばかり。でもヒロさん達は違う。なんかこう、うまく言えないけど」
ミズホさんは少し黙ってまた口を開いた。
「カッコ良かったの。もちろん志織ちゃんもね」
多分、ミズホさんは退屈だったのだろう。安全な生活は退屈な性格。映画のヒロインみたいに、ゾンビと戦って生き抜く。そんな生き方も憧れてるこだろう。
「ツトムさんは外には出してくれないの?」
俺は聞いた。ミズホさんはうなづき、
「女は子孫を残さなきゃならないから危険な仕事は絶対にダメなんだって」
ツトムさんの言い分は分かる。三浦家を守る。という事は、三浦家を存続させる。絶やさない事。家長ならば、なおさらその責任感は誰よりも強い。
「私は別にツトムさんの子供を産んでもいいの。でもね、一生このまま箱の中はイヤなの。せめて子供が出来る前に一度だけでも…」
ミズホさんは言った。俺に言われても。と思うのだが、多分、補給の時にミズホさんも連れて行く事を勧めて欲しいのだろう。
「ちゃんと門のゾンビも殺した事があるし、内臓や脳みそも見たわ。毎日筋トレもしてるし」
「俺も志織も凄くないよ。映画みたいにカッコよくもない。イヤな事だらけだよ。俺達は安全な場所を求めてここに来たんだ」
「ウソ。皆、命からがら転がり込むようにここに来たわ。でも貴方達は違う。なんかこう…そう、生き抜く自信があったわ」
確かに日々、命を削るような生き方ではなくなった。でも俺は二回死んでた。危ない生き方だ。自信はあるが、そんな自信はすぐに折れる程度のモノだ。
俺はコッソリため息を吐いた。
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