おばさん達が庭で豆を剥いて干している。俺には出来ない。手袋では出来ない。外しても出来ない。
やれる事。やるべき事を考える。考え事が行き詰まったり、イヤになるとその思考になる。そのように意識づけていた。グダグダ悩んでも仕方ない。
やるべき事。周りを見渡す。またあの男が陰から覗いている事に気付く。俺と同じ世代だからか?見張ってるようではない。興味があって覗かずにはいられない感じに見える。
俺は気付かないフリをする。色々な場所を見ながら場所を移動する。
志織と子供達の方には行かない。きっと俺にも遊んで。と、ねだるだろう。
牛を眺める。牛のゾンビは見た事ないが、もし牛のゾンビに出会って襲ってきたらを考える。まずは細い足を切り、倒れ込んだところを喉元を切る。いや、突っ込んでくるだろうからジャンプして飛び乗りお腹を切る。倒れる時に身体に頭さえ挟まなければ大丈夫か。
牛の首を触る。大人しい。骨が硬い。下腹から刺さないとダメそうだな。とにかく足を損傷させる事だな。くだらない考えを真面目に考えてみる。
やはり見張りも居ない。平和なのだろう。ここを襲って来る人間は滅多に居ないみたいだ。
「こんにちは」と声をかけられる。振り返ると女性。二十代後半から三十代前半。化粧っ気は無い。
俺は会釈する。彼女はミズホと名乗った。ここの生活がマンネリなのか、ミズホさんは色々と外の話を質問してくる。個人的な質問はしてこなかったのは助かる。火傷の話や家族の話とか。
荷物に未開封の化粧道具があったはず。断捨離ではないが、あまり使わない物は使う機会があるなら使う方がいい。使わない物はここに置いていってもいいかな。そんな事を思った。
置いてく。という事は俺はここを出てくつもりか?志織を置いて?いや、そもそもここに住めるとは思っていない。
「そう言えば背の高い男の人居ますよね?若い」
「あぁ、よっちゃんね。あの子はツトムさんの弟なのよ。ツトムさんは三男坊の長男で、よっちゃんは三男。次男は一年前に外に出掛けてまだ帰って来てないのよ。どうかしたの?」
「いえ、別に」
本当にどうでもよかった。独り言を誤魔化したくて聞いただけだった。
「ねぇ、どうやって今まで生きてきたの?大変だったでしょう」
好奇心旺盛な女性だった。俺は適当に嘘をおり混ぜ、話をした。
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