ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.65

公開日時: 2021年1月5日(火) 09:16
文字数:759

  手の平が剥けて休み、治るとまた木に登る。手袋が必要だ。やっていくとコツが分かってくる。力の分散がとても重要。木から木へ飛び移るのに手や腕の力だけではダメ。肩の筋肉を意識し、背中の筋肉も利用する。下半身の体重による遠心力も使う。

  体操選手に教えてもらいたい。本屋に体操の教科書とかあるのだろうか?


  テレビで何気なく観ていた体操の動きを思い出す。全身をバネにしていた。飛んでる時は力を抜いてるように見える。着地の衝撃を足だけでなく身体全体に分散するようにしていた。


  滑って落ちる時も背中からではなく、身体をひねって足から落ちるように意識する。なかなか難しい。が面白い。


  少しずつ上手くなるのが分かる。身体を動かす。当分、やる事が出来た。


  イヤな気分が減るとタオやシェーリーの事とかが気にならなくなる。思考の優先度が低くなる。

  俺の人並以上の力を充分発揮出来た方が役立つ。志織を守れる確率が高くなる。


  木の上で逆立ちをする。バランスを取るのが難しい。頭に血が集まるのが分かる。けっこう我慢し地面に飛び降り携帯で自分の顔を写メを写す。白くはない。薄いが人間の肌に近い。だがすぐに白くなる。

  色々な発見があり時間はあっと言う間に経つ。


  そろそろ朝飯を持って来るだろう。服が木にひっかかったりしてボロボロなのに気付く。肌にも木切れが刺さってる。

  イヤな気分は無くなっていた。出来ればタオ位の力を身につけたい。そんな事すら思える位になっていた。


  身体を動かしたせいか、考え過ぎなくなる。そうすると自然と周りの気配に敏感になる。目の焦点が広がる感覚。

  誰かが来るのに気付く。コンテナの窓から覗く。志織がフェンスの向こう。三浦家の私道から歩いて来るのが見えた。

  この焦点が広がる感覚をもっと広げたい。志織の存在は、小さな違和感が視界の隅に見えた感じで、気付けた。


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