ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.1

公開日時: 2020年9月15日(火) 21:56
更新日時: 2020年9月15日(火) 21:57
文字数:533

「ねぇ、聞いてる?」

  志織(しおり)の声で俺は我に返る。


  焚き火の火が消えかかっていた。俺は携帯電話を置き、木切れを焚き火に放って答えた。

「ごめん。小説書いてた。寝れないのか?」

  シェラフに潜り込んで寝入ってたはずの志織に答えた。生態反応はいつも通り。三年も見てると志織の健康状態が微細に分かるようになった。


「ね、どこまで、書けたの?見せて」

  志織は小さく笑って言った。

「まだ一ページしか書いてないよ」

  それでも俺は携帯を渡す。


「なんで両手がないの?あったじゃない」

  読み終わった志織は感想を言った。

「そうだけど、グジャグジャだったじゃん。それ書くの大変だからいっそ無い事にしちゃった」

「小説だからいいんだよ」

  言い訳めいた言葉の追加に志織は、フーン。と答えた。


「イエロー君、ちゃんと来るかなぁ」

「朝には来てるんじゃないかな?どう?面白い?」

「まだこれだけじゃ分かんないよ」

  志織の感想。あとは黙ったまま。きっと昔を思い出してるに違いない。


  俺は志織から携帯に目を向けてまた書き始めた。


  携帯の電池はまだ充分ある。電波は相変わらず圏外。

  二十体のゾンビが俺達から、ある一定の距離を置いてウロウロしている。


  うん。今日も平和だった。きっと明日も平和だろう。


  俺は再び携帯を開き小説を書き始めた。


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