ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.87

公開日時: 2021年2月21日(日) 09:34
文字数:710

  アロハシャツを着た日本人のトニは白い黒人を操っている。

  ポピュレーターの語源は分からないが、パペットは確か操り人形の英語。


「小説は実話だったんだ」

  俺は実物を初めて見てやっと実感した。

「半分ね」

  志織は屈託無く言った。

「どう説明したらいいかしら」

  志織はトニに聞いた。

「左手と右手を無意識に動かせるだろ?そんな感じで自分の身体を動かしながらコレも動かせるんだよ」

  トニの説明。

「余計分からなくなる説明しないでよ。ポピュレーターはもう一つの肉体を動かせるのよ」

  志織の説明。

「とにかく、ヒロは単体。私は操れない」

  志織はトニに言った。

「ウソだ。操れるはずだ」

  トニの言葉に志織は目を伏せる。

「操りたくないのよ」

  目を開けて志織は言った。

「なんで?」

  トニの言葉。

「んー。愛着が湧いたから?」

  志織は笑って言った。俺には照れ笑いに見えた。俺は嬉しくなる。

「ふーん。でも俺に教える事なんかないよ。操り方は分かるけどな」

  アロハのトニが言い、黒人のトニが近寄る。

「俺はゲーマーだったんだ。対戦格闘ゲームが好きだし、パペットを操る事にも対応が効く。だからかなり強いんだ。バトルでは負けねぇ。それにこの身体は強いし、壊れにくいんだ」

「ちょっと戦ってみるかい?ただしサードアイへの攻撃は無しだぜ」


「サードアイって後頭部のここに松果体という脳の一部があって、脊髄と繋がってる部分の辺りよ」

  志織が説明し後頭部を指で指す。

「道具もありで?」

  俺は聞く。

「なんでもあり。サードアイの攻撃だけ禁止。いいか、本気でやれよ。俺と組むならせめて俺と同じ位の強さがないと安心できやしねぇ。はい、スタート」

  とアロハのトニが言った瞬間、パペットの黒人のトニが体当たりをかましてきた。


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