アロハシャツを着た日本人のトニは白い黒人を操っている。
ポピュレーターの語源は分からないが、パペットは確か操り人形の英語。
「小説は実話だったんだ」
俺は実物を初めて見てやっと実感した。
「半分ね」
志織は屈託無く言った。
「どう説明したらいいかしら」
志織はトニに聞いた。
「左手と右手を無意識に動かせるだろ?そんな感じで自分の身体を動かしながらコレも動かせるんだよ」
トニの説明。
「余計分からなくなる説明しないでよ。ポピュレーターはもう一つの肉体を動かせるのよ」
志織の説明。
「とにかく、ヒロは単体。私は操れない」
志織はトニに言った。
「ウソだ。操れるはずだ」
トニの言葉に志織は目を伏せる。
「操りたくないのよ」
目を開けて志織は言った。
「なんで?」
トニの言葉。
「んー。愛着が湧いたから?」
志織は笑って言った。俺には照れ笑いに見えた。俺は嬉しくなる。
「ふーん。でも俺に教える事なんかないよ。操り方は分かるけどな」
アロハのトニが言い、黒人のトニが近寄る。
「俺はゲーマーだったんだ。対戦格闘ゲームが好きだし、パペットを操る事にも対応が効く。だからかなり強いんだ。バトルでは負けねぇ。それにこの身体は強いし、壊れにくいんだ」
「ちょっと戦ってみるかい?ただしサードアイへの攻撃は無しだぜ」
「サードアイって後頭部のここに松果体という脳の一部があって、脊髄と繋がってる部分の辺りよ」
志織が説明し後頭部を指で指す。
「道具もありで?」
俺は聞く。
「なんでもあり。サードアイの攻撃だけ禁止。いいか、本気でやれよ。俺と組むならせめて俺と同じ位の強さがないと安心できやしねぇ。はい、スタート」
とアロハのトニが言った瞬間、パペットの黒人のトニが体当たりをかましてきた。
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