ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.36

公開日時: 2020年10月28日(水) 07:58
文字数:1,376

  階段を上がってくる音。男が顔を出し、完璧だと言った。誇らしげな顔。志織を起こし、見るかい?と声をかけた。志織の返事を待たずに、早く見てくれ。と言う。


  バイクの左側にサイドカーが付いてあった。タイヤは太くなって、右側に予備のガソリンタンクが付いてある。

「ほら、このサスでどんなデコボコ道でも壊れないぞ」

  自慢気に言う。

「シートはないからどこかで布団を探せ。ここに置けば座れる。ガソリンタンクはこうやれば切り離せる。ほら、簡単だろ?」

  男は忙しなく動かしながら説明する。楽しそうだ。

「ライトの交換はここだ。ほら二つも置ける」

「タイヤはパンクしたら、ここと…ここのネジを外して交換するんだ」

「ギア比は…」

  次々と説明していく。難しい話は分からないが、この男が改造したバイクなら完璧だろう。

「名前はパルキッツァだ」

  男は最後にバイクの名前を言った。俺は何回か聞き直し頭に入れる。名前の由来を聞いたが、「パルキッツァはパルキッツァだ。それ以上で以下でも無い」と言う。英語かロシア語かもしれない。ネットがあれば分かるのだが。


「よし、行くか」

  と男は言った。俺は、どこへ?と聞く。

 「俺は眠いんだ。お前らこれに乗って早く行け」

  俺は残念というか名残惜しい気持ち。でも男は何とも思ってないように見える。


「ありがとうございます。また逢いたいです」

  俺は言葉少なく言った。口を開くと寂しい気持ちまで、出そうだったから。

「お前が生きていたらまた逢える」

  男はアクビをしながら言った。そっけない別れ。照れなのか?と男の顔色を伺うが分からなかった。

  男がバイクのエンジンをかける。軽快なエンジン音。

「ほら一発だ」満足気な顔。俺はまたがる。

「ちょっと待て」

  と男は志織を手招きし、二人して二階へ上がる。降りて来た二人の手には缶詰がたくさんあった。

「こっちがお前の。これがお前の」

  とカゴに入れる。それから男はシャッターの前に立つ。

「開けたら構わず進め。パルキッツァ、頼んだぞ」

  男はバイクを叩いて言った。朝でゾンビがたくさん中に入って来るはずだ。大丈夫なのだろうか?


  構わずに男はシャッターを開けた。ゾンビは近くに居なかった。俺は安心しアクセルを回した。出た瞬間にシャッターは閉まる。ゾンビは周りにたくさん居た。掴まれないようにスピードを出す。


  あっと言う間の別れだった。志織は大きなゴーグルをかぶっていた。二階で男から貰ったみたいだ。


  もう朝方のせいか、人間は見かけない。入りやすい民家や、門にゾンビが群がっている家屋に、夜通し歩いた人間が休んでるはず。


  道路は邪魔な車などはなく思ってたより快適だった。エンジン音もうるさくはない。心配なのは志織の座ってるカートの下にマフラーがある事。熱いのではないかと。早くどこかで布団か毛布を探さないといけない。


  俺には感じないが、きっと風が気持ちいいだろう。道なりに走り続ける。歩きとは雲泥の差の速さで進む。下道の方が小回りが利く。急いでも仕方ない。安全が第一。


  ガソリンのタンクが半分に。男はちゃんと手動式ポンプを用意してくれてた。放置してある何台かの車の一台にガソリンがあった。バイクに移し替えそうとする。が、ポンプは奥まで届かない。ガソリンの入ってる軽トラックを探す。軽トラックなら届くはず。届いた。ガソリンを移し替えす。


  軽トラックを見つけ次第ガソリンを調べながら進んだ。


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