ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.67

公開日時: 2021年1月7日(木) 08:44
文字数:1,074

結局、何事もなく三浦家に居つく。

  調達は、冬を除いて月に一度は行くと聞いた。ツトムさん達の日常はゆるく、男達は農作業と動物の罠を仕掛けたり、魚を獲る。

  子供達は毎日が夏休みだ。女性達は採ってきた山野草を採って乾燥させたり、魚を干したり保存食作り。そして農作業。


  ゾンビもただ置いてるだけで、見かけだおしになっている。凄く平穏だが生きるだけの毎日。

  酒を呑みたいとか退屈とかの贅沢は思ってるだろうが、誰も口にしない。かと言って誰も町に行くのは行きたがらない。

  ゾンビや人間も怖いが、破傷風の怪我や病気の痛みを恐れてる。


  信長の鬱屈する気持ちがよく分かる。変わりばえの無い日々。質素な食事。何が楽しくて生きてるのか?信長はずっと思っていたのだろう。


  ただ生き延びる。平和だった時代しか知らない人間は辛いかもしれない。婆さん達だけは毎日楽しげ。多分、戦後を体験したからだ。毎日、農作業と子供の面倒。家族や親戚とのお喋り。充分満足している。


  当たり前の価値観が違う。俺はこれが毎日続いても大丈夫。志織の安全が高い。それにやる事もある。運動能力アップの練習。魚を獲る練習も始めた。泳いでる魚めがけて、小石を指で弾く。なかなか当たらないが命中精度が上がれば拳銃まではいかないが、よい武器になる。

  道路から見える川で練習し、気配を広げる意識もする。


  ミズホさんもヨウジ君もあれから、一回も来ない。志織だけが食事を持ってくる。ツトムさん達とは出掛ける時に会うくらいだ。


  多分、俺がゾンビの身体だとツトムさんは知っている。知っていて知らないフリをしてくれている。そもそもバレないだろう。と思う事が浅はかだったのだ。


  気がつけば一月近く経った。その間、この道を通る人間とゾンビは全く居なかった。


  代わり映えのない毎日だったが、魚に小石を投げるのが命中し始め、木から木への跳び移りもなかなか上手くなった。

  コンビニのゾンビがゼロになり、ゾンビの捕獲に町の近くまで男達と行ったくらいだ。遠征する男達はこないだと同じ二人で助かった。

  俺を恐れたりはしないが、距離を縮めようと思ってない態度も、俺は逆にありがたかった。


  次の探索の日が決まる。ヨウジ君とこないだの男二人。いつもの拠点の町から、タオと反対側の方に出向く。


  食料と燃料はもちろん、冬に向けての服や布団類。あと出来れば本、教科書。と捜す物が変わる。

  志織が行きたがる。危険だし荷物もそんなに運べないし。と俺もツトムさんも反対したが押し通される。多分、退屈してるのだろう。

  ミズホさんは行かない。と志織が言った。ミズホさんとは数回会ったが一度も会話はない。


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